無頼派もやしワンタン麺・・・渋谷「喜楽」

私はラーメン二郎原理主義者ではない。
ましてや「ラーメンは豚骨しか認めない」などという器量の小さな男でもない。


確かに私は多くの偏見で満ち溢れているし、首尾一貫性もないし、厭世的で退廃的で悲観的ではあるが、ラーメンの多様な価値観を受け入れる事が出来る程度には成熟した大人なのだ。


渋谷百軒店の老舗ラーメン店「喜楽」。
そのあまりにもオプティミスティックな店名とはまるで似つかわしくない無愛想な店の「もやしワンタン麺」を、私はハタチの頃から愛している。
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この日は1階カウンターが満席だったので、2階のテーブル席に案内された。
瓶ビールを2本飲み、もやしワンタン麺をすする。
ささやかではあるが、至福である。

相席の二人組はステレオ・タイプの売れない広告クリエイターのようなナリで、この喜楽にまつわる蘊蓄を語り合っている。
こういうのは欝陶しいと言えば欝陶しいが、滑稽さにフォーカスしてみれば意外と面白いものだ。

なんて感じでもやしワンタン麺をすすり、ビールを流し込んでいると、厨房にいなくてはいけないはずの店のオヤジが2階に駆け上がってきた。

何事かと思って見ていると、おもむろにビールの栓を抜き、カーテンの陰に隠れてグビグビと飲み始めたのだった。
彼は「隠れて飲む」という配慮は怠らなかったが、生憎と私の席からはその姿が丸見えだったのだ。

もしかしたらアル中なのだろうか?

それはわからない。

しかしアル中だろうとヤク中だろうと、作る料理が旨ければそれはそれでいいのではないだろうか?品行方正だが作る料理はまずい料理人に較べたら、遥かにマシだ。

と思う。

それに元来私は「無頼」が好きなのだ。

やはりここは愛すべき店なのである。