成都放浪記~黄龍渓の大冒険(5/1)

朝食を摂りに降りたホテルのレストランの大型モニターには、新しい天皇陛下が映っていた。
CNNが生中継していたのである。

そうか。
昨夜眠りについた時は平成の世に生きていたのだが、今朝は既に令和なのか。
しかし、多くの中国人にとって日本の元号などどうでもいいことであろう。
そしてCNNもその後は新証言があったのか、トランプのロシア疑惑一色である。

さて、どこに行こう?
昨日、とある小旅行のプランを立てて駅まで出向いたのだが、狙った列車の切符は前日にもかかわらず既に売り切れており、やむなくその翌日の切符を購入したのである。

ガイドブックを適当に見ていると、黄龍渓という明朝時代の建物が多く残るという町を見つけた。
蜀漢の時代に出来た町で、蜀地方独特の建築様式は映画のロケ地になったほど趣が有るという。
ここだ!ここにしよう。

成都は良いところではあるが大都会だし、人も多過ぎて多少辟易していることも否めない。
やはり郊外でのんびりしてこその海外旅行だよ。

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おわかり頂けるだろうか?
伝わるだろうか?

まるで原宿の竹下通りのような混雑である。
竹下通りは狭くて短い通りに人が殺到することにより生まれる混雑だが、黄龍渓の混雑はまるでムスリムのメッカ巡礼のような、単純に恐ろしい数の人間が集まったことによる混雑、私にはパニック寸前に思われて恐怖すら覚える。

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しかし町並みは美しい。
嗚呼、俺は今中国に居るのだ。

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海の無い四川、魚料理は川魚。
これはライギョかな?
ハノイの老舗ライギョ料理店で酷い目にあった記憶が新しく(そう言えば去年のゴールデンウイークだ)、個人的に関わりたくない魚ナンバーワンなのである。

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観光エリアを外れるとこんな町並み、人々の暮らしが垣間見える。。
つまり再建された張りぼてではなく、現役の町なのだ。

さて、成都行きの終バスは18時半発。
しかしこの混雑ぶりだから余裕を持って行動しようと1時間も前にバスターミナルに行ったのだが...。

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何ですか、この混雑ぶりは!?
果たして私は無事にバスに乗ることが出来るのだろうか?

結果的に乗ることは出来たのだが、無事とは言いづらいものであった。

19時を10分程過ぎた頃だろうか。
バスも来ていないのに突然列が動き出した。
そして全員がチケットを片手に一カ所に殺到している。
皆さん大声で何かを叫び、ただならぬ様子だ。

私は恐る恐る遠巻きに見ていたのだが、椅子に座ったおばさんに我先にとチケットを差し出し何事か書き込んで貰っている。人々は大声で何かを喚きながらおばさんの眼前にチケットを突き出す。負けじとおばさんも喚き返しながら揉みくちゃにされつつ作業を続けている。
そうこうしているとバスがやってきたのでしれっと乗ってしまおうと乗降口へ行くと、私のチケットを見た係員は何事か喚きながら正に揉みくちゃにされているおばさんの方向を指さしたのであった。

乗車を許された客のチケットには何やら番号が書かれている。

そうか、整理番号を書いているのか!

私は悟った。
この国ではマナー良くおとなしく待っていたら、永遠に自分の順番は回って来ないのだ。
私も戦いに参加し、そして勝たなくては成都に戻れない。

チケットを握りしめた右手を高く掲げながら、私は人だかりに殺到してニイハオ狂人と化した。

女子の爪が私の手の甲を引っ掻いた。
野郎の肘が私のメガネを直撃した。

それでも私は大和魂全開で、チケットを哀れなおばさんに差し出し続けたのだった。

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