旅読書・・・上と外(恩田陸)

私が旅に出る理由の30%程をを担っているのが、心行くまで読書を楽しみたいという欲求なのだが、その時私は本なんて何一つ読みたくなかった。

そう、何も、読みたくは、なかった。

5月の半ばぐらいから本来の私の仕事とは関係ない仕事、というか労働、いや、ただの作業に忙殺され、精神的にも肉体的にも疲れはてた、その名残のようだった。所詮は素人の自己分析だけど、当たらずとも遠からじ、といったところだと思う。

私は決して活字中毒などではなく、読みたくない時には全く本を読まないが(そういう期間が1~2ヶ月続くことも珍しくはない)、読みたい本を読み進める気力がなくなりページが進まない時というのは、経験的に精神状態の良くないことの表れだと捉えている。

ましてや旅行の際は、積ん読の山から今回の相棒をピックアップするところから旅が始まるのに(そしてそれはいつだって楽しい作業に他ならないのに)、何も持っていきたくないなと感じる始末。

ライトで、何も考えずに読めるような本を選ぼう、ということで行きの飛行機で手を付けたのが恩田陸の「上と外」である。

イメージ 1


正解でしたね。

最初はなかなか集中出来なかったけど、ストーリーの面白さに徐々に苦痛なく読書が出来るようになってきた。

はっきり言って設定は無茶苦茶だし、目に余る程に相当なご都合主義でもある。
しかし無茶な設定もご都合主義も、小説なら許される。フィクションだからだ。

随所に良い言葉も散りばめられ、最高とは言えないまでもなかなか楽しく読めました。
リハビリには最適の小説だった。
何より良いのは二度と読み返す訳がないと確信を持てるので、読後は何の躊躇いもなく現地のホテルに投棄することが出来たことだ。

村上春樹が何かのエッセイで書いていた「スパゲッティ小説」、それはスパゲッティを茹でる時間の暇潰しとしてではなく、スパゲッティを茹でている間にもついつい読んでしまうという意味合いらしいが、正にそんな感じの小説でした。

みんな違ってみんないい。(みすゞ)

そう、純文学だってエンタメだって、こうじゃなければならないというような窮屈なものではないはずだ。

良いタイミングで出会った良い小説だった。

とは言え本番は次だけどね。