紅牙タイラバカップ…11/18野毛屋

思うところあって、という言い方ももやっとしているが、とにかく私は釣り大会の類いとは、特にメーカー主導の大会とは距離を置こうと決めていた。

しかし東京湾で初めて行われるタイラバ大会、船宿には野毛屋が名を連ね、舵を握るは我らがキャプテンUG。

そのキャプテン直々に出場を依頼されたとあれば、断るという選択肢は私には無い。

雨、風ともに気掛かりな予報が出ておりプライベート釣行であれば間違いなくパスするところだが、前夜に大会関係者より決行の連絡があり、退路は絶たれた。

釣座は先着でなく抽選であり、私はいつもより遅めに家を出てノンビリと八景を目指す。

受付に行くとトモにミヨシ、有利な釣座にまだ空きがあり、やはり残り物には福があるなとほくそ笑んだのも束の間、私は左舷ミヨシ四番手という残っている釣座の中でも最悪に近い席を引き、もう敗北も決まったようなものである。

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どんよりとした曇天の中、通常より15分早い7時に河岸払いした大会船。

船は第二海保の手前でスローダウン。
時折大型が顔を出す根周りだ。

しかし潮目が丁度入り込んでおり、草、ごみ、ボラだかコノシロだかの沢山の死体が海面を流れ、ラインに絡み付く。

早々に見切りをつけると、ここから少しずつ南下しながら実績のあるポイントをひとつひとつ丁寧に攻めるキャプテン。

多分三ヶ所目のポイントだったと思う。
底から3m程のところで不意に力強いアタリ、しかし直ぐにゴムを離してしまいこれまでかと思ったら、5mより上で再びアタリそのままフッキングして魚が反転した!

「キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!」(死語)
1kg程に設定したドラグがフル稼働してラインが放出、2kgはありそうな手ごたえだ。

少しドラグを締め、竿を立て気味に魚を浮かせる。
頭を振って突っ込む感触、真鯛確定。

残り10mぐらいから何か引きがおかしいなと不安になるも、海面に浮いたのはキレイなメス。お隣さんとオマツリしていたので引き味がおかしくなったのだろう。

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血抜きしてから検量するというルールのため、生け簀には入れずに釣座にて即座に絞める。

いやー、しかし幸先良いなぁ。
スロースターターの私が朝イチから本命を、しかも良型を釣り上げてしまうなんて、これはもちすぎ君が降臨して釣果はツ抜け、大会では優勝、数多の釣り番組から出演オファーが殺到し、全国の釣りガールから山のようなファンレターが届き、出版社から依頼を受けて執筆したエッセイは開高健賞を授賞し、薔薇色の人世が私を待ち受けているという吉兆かもしれない。

しかし言うまでもないことだが現実はそんなに甘いものであるはずもなく、我が人生に薔薇色の未来が待ち受けているわけでもなかった。当然だ。

その後は魚を追加するどころか外道を含めて一切のアタリがない。
そして使用が義務付けられている紅牙のラバージグヘッドには致命的な欠陥が、即ち他社製品との互換性を一切考慮していないという唯我独尊的な欠陥があり、私はトラブル処理に多くの時間を費やす羽目となった。
当然イライラは募り、冷静さを欠いていく。
そして最大の問題点はストップフィッシングが13時であること。
これは表向きの野毛屋の沖上がりよりも2時間早く、実際にはキャプテンが納得するまで上がらないいつもの第二忠丸よりも3時間早い。

終了5分前の時点で船中まだ8枚(多分)の低調、客以上にキャプテンが納得していないであろうことは想像に難くない。
たぎるマグマのように熱い漢(と書いて“おとこ”と読みます)キャプテンUG、もしかしたら審判員として乗船しているダイワの職員を恫喝して、無理矢理延長させるかもしれない。規則を理由にダイワの職員が断るようなことがあれば、血の雨が降る事態も考えられる。マグマの勢いを知らない市井の民とは、あまりにも無邪気に無知なのである。

私は怯え、震えた。

13時、操舵室のキャプテンがマイクを握って咆哮した。
それは恐れていた天災ではなく、釣り終了の合図だった。

【釣果】
7時出船、13時沖揚がり
真鯛1枚(2.1kg)


【タックル】
ロッド:DAIWA紅牙X69HB
ライン:PE0.8号、リーダー:フロロ4号

【本日の総括】
キャプテンに請われて出場した最低限の責任を果たすことが出来て安堵した、というのが私の偽らざる感想である。

しかしこれから上げ潮が効いて魚の活性が上がる時間帯、競技なんてどうでもいいからもっと釣りをさせて欲しい、というのもまた偽らざる感想である。

やはり大会の類いには私はとことん向いていないのだろう。

肝心の結果であるが、私は僅かな差で入賞を逃した。

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代わりと言っては何だが、抽選大会でカップ麺1ケースを頂いた。
これはなんというか、ありがためいわ...いや、何でもありません。
嬉しいです、ありがとうございます。

途中渋滞に巻き込まれたりしたけれど、帰宅は15時過ぎ。
本来ならまだ竿を出してる時間だよな。
微妙な気持ちを抱きつつ、このエクストラ・タイムは釣りに関わることで普段なかなか出来ないことに費やすべきなのではないかと考えた。

とりあえず私は切れ味の鈍ってきた包丁を研ぐことに決め、砥石を水を張った盥に浸してからリールをを洗い、次いで身体と防水ウエアを浴室で洗った。

私の釣り欲は全く充たされておらず、欲求不満をもて余しながら一日を終えた感じだ。