タイ放浪記~サンライズ、移動、スコール(10/24)

前夜、トゥクトゥクのチャーターを宿の女将に依頼して、サンライズツアーへ。
ピックアップは午前5時半。
漁師にとっては特に驚くに値しない時間である。

定時5分前に部屋を出ると、なんと女将もお出迎え。そして門の前で私を待っていたのはサムロー方式の前輪より前に客席のあるトゥクトゥク。多分初めての体験だと思うが、いざ走り出してみれば剥き出し感がハンパ無く、なんかあちこちがムズムズする。

ん?路面が濡れてるやんけ、雨降ったんとちゃう?朝日見れるんけ?何が早起きは三文の徳じゃ、このドアホ!

昨日読了したばかりの町田康「告白」の世界に魂の半分を抜かれたままの私は、心のなかで似非河内弁で毒づく。

「着いたぞ!」
ドライバーがトゥクトゥクを止めたのは歴史公園西の果ての深い森の奥。
ここが朝日のポイント?と訝しく思っていると、
「違う違う!」
と指差すは丘の上へと向かう上り坂の石畳道。
幅は50cmといったところか?
辺りは真っ暗で街灯の類いもなく、石畳道は雨で濡れてツルツル滑り、おまけに人っ子一人おらず鳥の鳴き声が聞こえるのみ。
...。
えーん、怖いよぉー(´Д`)

しかしドライバーが私を見ている。日本男児としては前進あるのみだ。
「やるっきゃない!」
私は土井たか子並みの悲壮な決意で退路を絶つと、ヨロヨロと石畳道を登り始めた。

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山頂、というか丘の上のお寺には大きな仏陀像。
他に人は誰もおらず、仏陀と私だけの世界、なんとも神秘的な雰囲気である。

しかしご覧の通り東の空は雲に覆われている。

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なんとか雲の切れ目からでも御来光を拝めぬものか。

しかし私の願い虚しく、太陽の姿を確認出来ぬまま辺りは明るくなってきた。

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ふんっ、もういいわ!

私は石畳道をゆっくりと降りる。

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こんなふざけた道ですよ。
あぁ、こわっ!

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ついでに帰りしなに昨日見れなかった北エリアの遺跡を回ってもらう。宿から歩くにはしんどい距離だったのでこれ幸い、といったころ。
早朝につき入場料を払うゲートはむじんくん。そう言えば朝日を見に行った西のゲートの料金所もむじんくんだったな。ラッキー!

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上座部仏教における仏陀像は、我々に馴染みある大乗仏教のそれとは随分と異なっている。

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おおっと、既視感のある光景だと思ったら、地球の歩き方の表紙と一緒ではありませんか!なんというか、宝探しに成功したような気分だ。

そんなこんなで早朝のツアーは2時間で終了。料金は300バーツだが、本来払うべき西エリアと北エリアの入場料各100バーツを払わずに済んだので大変にお得なツアーなった。
残念ながら朝日は見ることが出来なかったけど、早朝の遺跡は人も少なく、充分楽しめた。

ホテルに戻った後、そういえばこのホテルはセルフサービスのトーストとコーヒーのみが用意されたコンチネンタル・ブレックファストしかないと思い当たり、タイ風朝食を探してもう一度外へ。

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スコータイ風スープヌードル
細い米粉麺に透き通った薄味のスープ。タイ料理というよりはベトナム料理といった風だが、まぁ、普通に旨い。

その後博物館を見学、更に早めのランチまで済ませ、ホテルの女将さんに挨拶してチェックアウト。おかげでとても楽しい滞在だったとお礼を述べる。

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平屋建て、部屋数僅かに3のこじんまりとした宿だけど、新しく、清潔で、部屋のセンス良く、女将さんは笑顔が素敵な控えめな方で、余裕があれば2,3日ゆっくりしたい気分。

バス停で文庫本読みながらバスの到着を待っていると、私の目の前に宿の女将が現れた。
なんとその手には、私が宿に置いてきた町田康の「告白」が握られているではないか。
私は旅行中に読み終えた本は、基本的に旅の恥と一緒に棄てることにしている。
(ネパールでは宿の近くに日本語の本を扱う古本屋があったので寄贈した、つもりが小銭を無理やり掴ませてくれた)
ゴミ箱に捨てるのは忍びないので(地球の歩き方除く)たいてい机の上に置いてくる。宿がそのまま保管して、いずれ来るであろう退屈をもて余した日本人客への差し入れとするもいいし、捨てちゃっても勿論構わない。私にとっては、読み終えた場所に置いてくることに意味がある。
しかしゴミ箱に投棄するという意思を私が見せなかった為に女将に無駄足を踏ませてしまったのだし、今までも私が忘れたと思って気の毒に思ってくれたホテルのスタッフもいたかもしれない。
反省、である。
今後は感傷や思い入れを排除して、キチンとゴミ箱に捨てるようにしよう。

バスは行きと同様に満席であった。チェンマイ市内の渋滞の影響で6時間を超える長旅となった。
冷静に考えたら羽田~バンコクのフライトと時間が変わらないではないか。

近くて遠い、スコータイ。
行って良かった、スコータイ。

その後チェンマイの旧市街にあるホテルにチェックイン。新市街にあった最初のホテルは夜遅くまで賑やかな場所にあったが、旧市街は夜7時半でもひっそりとしている。

ホテルのスタッフにオススメのレストランを2軒紹介して貰ったのだが、片方は何故だか閉まっており、もう片方は郊外のデニーズのような明るい佇まいが私の気に入らず、目についたレストランに適当に入った。
それでも普通に旨い料理が出てくるのがタイという国の底力だろう。

しかしレストランを求めて長い時間徘徊したことが凶と出る。
店を出てホテルへ向かって歩いていると、ポツリと水滴。それは瞬く間に激しいスコールへと発展した。
この旅で初めて遭遇する雨、しかも土砂降りである。

雨期はあくまでも末期であり、まだ完全に明けてはいないようだ。

私はピザレストランに飛び込んで、ビールを飲みながら雨宿りをさせてもらった。
激しい雨音をBGMにビールを飲みつつ読書をするのも乙なものだと言えなくもない。

雨は40分ほどで止んだ。