タイ放浪記~女囚さそり、ドライババー、納豆(10/25)

私の泊まったホテルの隣に

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このようなマッサージ店があり、気になったので行ってみた。

women's massage center、元女囚によるタイ式マッサージ店である。

料金は1時間200THB。
改心したとはいえそこは元女囚、中には昔の血が騒ぎロッカーに入れた私の荷物にねらいを定める不遜な輩もいるかもしれないと内心ドキドキしていたが、施術も普通に気持ち良く、料金も安く、とても良かった。

ガイドブックを調べると、ここのすぐ南にチェンマイ女性矯正施設なる、服役中の女囚に対する矯正教育の一貫として、女囚自らの手による一般人へのマッサージを提供している施設があった。
ということはムショ暮らしのうちに手に職をつけ、出所の折には「もう戻ってくるんじゃないぞ」と看守に諭され、今後は元女囚のマッサージ師として生きていくというシステムが出来ているのかもしれない。

これはとても良い試みだと思う。
日本でも最近は2980円ポッキリのマッサージ店がやたらと増えているし、私はバリでもラオスでもカンボジアでもベトナムでも台湾でもマッサージを受けている。つまりマッサージ需要とは世界共通のもので、需要自体もとても多い。
しかし、いずこのマッサージも揉んで叩いて指圧して、という感じで本質的には大差ないが、タイマッサージだけは全く別物なのである。
押す、揉む、伸ばす、引っ張る、踏む、アクロバティックな姿勢も強いられ、施術の後には身体が軽く感じる。もう無形文化遺産と言って差し支えあるまい。

タイマッサージの施術を身に付けるということは、本物の職人になることなのである。
頑張れ、さそりどもよ!

さて、その後は乗り合いソンテオでドーイステープ山頂に建つワット・プラ・タートへ向かうため、専用ソンテオ乗り場へ。
ドーイステープまではそこそこ距離があり、10人集まるまでソンテオは出発しないとのことで、ソンテオ乗り場の脇のベンチで待たされる。
ドライバーのババア、略してドライババーから一人往復100バーツと言われていたが、待てど暮らせど10人に達しない。
ようやく8人集まったときに、ドライババーから「あと二人来るのを待つか、一人120バーツで今すぐ出発するのどっちがいいか?」と訊かれたので私はすぐさま120バーツ払ってソンテオに乗り込んだのだが、私以外(ちなみに全員白人)は誰もこの提案に乗らず、私一人ソンテオで待つ。
結局9人目の客(ちなみにまたしても白人)がやって来てドライババーも観念、一人100バーツにて出発。
ちなみに9人中6番目の客だった私の待ち時間は約30分。
旅行会社主催のドーイステープツアーは190バーツだったので、効率考えるならツアー参加の方が良いだろう。(豆知識)

約30分のドライブでワット・プラ・タートに12:15に到着。
「13:45に出発するからそれまでに戻れ」とドライババーに言われて散会!

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入口に鎮座する仏陀

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両側に龍をあしらったこんな長い階段を登って本堂へ。外国人のみ30バーツにて、という東南アジア諸国に良くみられる外国人集金システムは、こんな聖なる場所でも健在。
この旅ではやたらとタイ人からタイ語で話しかけられることが多いし、タイ人のふりしてタダで入っちゃおうと僕の中の悪魔くんが囁いてきたが、仏陀の逆鱗に触れたくなくてキッチリ払う気弱なボク。

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日本の、いや、大乗仏教の寺院とは全く異なる上座部仏教、非常に興味深い。

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標高1080mのドーイステープ、チェンマイの町並みが一望できる。

さて、少し早めにソンテオに戻り、他の白人乗客たちも全員集合したのに何故かドライババーは乗り込まない。
何をしてるのかと思ったら、
チェンマイチェンマイ!」と観光客に向かって絶叫、キャパに対して一席空いているのでなんと熱心に客引きしてるじゃないか!

しかし白人男性は熊かパンダのような体形が多く車内は既にスシ詰め状態、なかでも一人傭兵かチャック・ウィルソンかというようなガチムチもいて、うううっ、早く出してくれ~!

14時を過ぎた頃フランス人形のような可愛い彼女を連れたフランス語を話していたイケメン君が英語でドライババーを一括(曰く「15分も過ぎてるじゃないか!」「他にも行きたい所があるんだよ!云々」)、や、せめてあと5分と粘ったドライババーに全員の冷たい視線とブーイングが突き刺さり、苦笑して諦めたかのように運転席へ。
「みんな、彼のおかげで出発出来るぞ!このヒーローに20バーツを!」とチャック・ウィルソン氏が叫ぶ。車内は爆笑に包まれた。

さて、我がガイドブックによると私がソンテオを降りた場所から北に数百メートルいった先に、シャン料理を出す店があるという。
シャン人とは主にミャンマーに住むタイ系少数民族であるが、この辺りは冒険作家高野秀行の作品に詳しいので興味あるかたはそちらを。

しかし流石タイ北部、シャン人によるシャン料理店があるなんて!行かないわけにはいかないわ。

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メニューは全てタイ語、私は全く読めないのだが、店員のお姉さんは一言も英語が話せない。確かに私もしばしばタイ人にタイ語で話しかけられているとはいえ、実はタイ語は全く話せないのだよ。申し訳ないけど人は見かけによらないのである。
すると助けを呼びに行ったお姉さん、程なく青年が写真入りの英語メニューを持ってきたのだが、んんん?
タイ語メニューでは30バーツから50バーツのメニューが並んでいたのだが、英語メニューでは60バーツから200バーツまでと2~3倍の値段がついている。
シャン人よ、お前もか!
タイ語と英語のメニューで値段が違うのはバンコクでもアユタヤでも散々見た光景。ついでにチェンマイ市内のソンテオも一人上限30バーツと書いてあるのに、英語で値段交渉すると最低でも40バーツなのである。
まぁいいや、これも仏教の喜捨の精神というヤツの延長であろう。

英語でオーダーした為に料金の跳ね上がったカレーと、ビールを頼むと、
「タイではこの時間ビールは売れません」と冷たい一言。
俺はタイ人でもシャン人でもない、日本人なのだが、郷に入りては郷に従うしかないのである。

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ポークカレーという英語名だったが、肉団子のカレー風味、パクチー乗せといった風のメニューがやってきた。
ライスが赤米なのがそれっぽくて良い。

ん?

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店の奥にこんな貼り紙がありますよ。
そう、ミャンマーには納豆があるのであった。この辺りも高野秀行氏の著作に詳しいので興味あるかたはそちらを。

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納豆と香草とあと肉かな?叩いて軽く炒めた感じの料理。
臭いは日本の納豆よりも強烈である。
食べても強烈、アンモニア臭のような強い発酵臭が鼻腔を突く。後味もアンモニア、しかし味は良い。
最近は「におわなっとう」に代表されるソフトな方向へ進化した日本の納豆だが、私が子供の頃に食卓に上がっていたものはもう少し強烈だったように記憶している。
そして米と納豆が合うのは世界共通。一口目の衝撃が過ぎたら普通に美味しく、米と混ぜながらあっという間に平らげた。
納豆好きなら抵抗なく、納豆嫌いならより寄せ付けないプリミティブかつブルータルな料理だった。

散々歩いて沢山汗をかいたので、シャワーを浴びてビールを飲もうとホテル近くのコンビニへ。
かごにビールとナッツを入れてレジに行くと若い男性店員がタイ語でなにやら捲し立てる。
なんだ、なんだ、と思っていたら、隣のレジの女の子が笑いながら「ビールの販売は5時からなんです」と私を斬り殺す一言。

残念。無念。