四半世紀・・・環七土佐っ子ラーメン(池袋)

「過去はとにかく美化される」と、かの岡本太郎は言っている。
「だから正しい、というのは老人の感傷以外のなにものでもない。」と。

時は1991年、私が屈折して鬱屈した大学生だった頃、東武東上線ときわ台に土佐っ子ラーメンという人気の店があった。

ロットごとに色分けされた食券代わりの割り箸を購入して並び、ロットごとの総入れ替えスタイルで提供される劇場型のその店は、極端に背脂の多い独自性と相俟って唯一無二の雰囲気を放っていた。

私は大学三年生であったその年に、縁があって集中的に通っていたものだ。

しかし自宅から遠く、当時は車も持っておらず、そして興奮が冷めてしまえば土佐っ子よりも桂花の太肉麺の方が好みであると認識し、全く行かなくなってしまった。
店も程なく閉店。

余りにも短い蜜月であった。

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しかしいつの間にか池袋にこんな店が出来ていたのですね。

当時の熱狂とは余りにもかけ離れた佇まいだが、どうしても入らないわけにはいかない。

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感傷にはビールがよく似合う。
銘柄が黒ラベルかキリンラガーであったらよりマッチしたことであろう。

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チャンラーメン。

土佐っ子にチャーハンというのもいかにも不似合いだが、ランチタイムて安かったのでついつい頼んでしまった。

仕上げに豪快に背脂をぶちまける為に触れるのを躊躇ってしまうようなギトギトの丼が土佐っ子の特徴だと認識していたが、時代のせいか店が違うからか、綺麗な器である。

しかし中身はドロドロの背脂。
確かにあの頃のあの味の遺伝子は感じられるのである。

感傷によって美化された感想なのかもしれない。
そして私自身、前だけ向いて歩いているつもりではある。

しかしあの頃確かに私はそこにいた。

これは感傷ではなく、事実なのである。