台湾放浪記・・・5/7

阿里山御来光ツアーで早起きをした私は、夕食後にビールを飲みながら本を読んでいたら猛烈な眠気に襲われブラックアウト。

途中エアコンの寒さに何度か目を覚ましたものの6時までぐっすりと眠ってしまった。
枕が変わると眠れない繊細で不眠症気味だった私はもう存在しない。

宿泊していた民宿で朝食。
軽く言葉を交わした隣のテーブルの香港から来た3世代家族(お婆ちゃん、ご夫婦、孫息子の四人組)が野菜の炒め物とおかゆを食べていたので、私は遂に台湾人の家庭料理を堪能出来ると胸を熱くして待った。

しかし私に提供されたのはホットサンドと牛乳であった。

何故だ?

しかも好き嫌いは比較的少ない私だが、牛乳は天敵とも言える程苦手。飲んだら確実に嘔吐するし、ホットミルクは匂いを嗅いだだけで嘔吐可能である。

チーズを克服し(むしろ青カビ系とパルメザンを除けば好きにすらなり)、ホワイトソースも大丈夫になったが、本体の牛乳だけはいくつになってもどうしても駄目なのだ。

オーナー夫婦はとても親切で、人の良さが十二分に伝わるのだが、私はここでホスピタリティの難しさについて深く考えることになる。
実は昨夜も似たような体験をしていたのである。

旅支度を整えて、さぁ三義観光である。
地球の歩き方には町の名前すら触れられておらず、私は事前にネットで調べた勝興駅跡と龍騰断橋を訪ねたかったのだが、公共交通機関は無い。
タクシーをチャーターしようとオーナーに相談すると、「free bus」があるという。無料のバス?
私の英語は相当に酷いのだが、こちらのオーナーさんの英語は私に輪をかけてpoorであり、そこが最大の問題であった。
私は市バスの一日乗車券か?と訊ねるも、駅から20分おきに無料のバスが出ているからそれに乗れ!と繰り返される。
そんな上手い話があるかよ?

私はコミュニケーションを諦めて、自力で駅前のタクシーと交渉しようと思い、とりあえず大きな荷物を宿に預けて出発しようとしたら、オーナーさんが駅まで車で送ってくれるという。
徒歩5分かからないのだが、気持ちが有り難かったので乗せて貰うことにした。

すると、駅をちょっと通り過ぎたところにある大きな客家料理店の前で下ろされた。
ここがバス停だという。
見ると急拵えの板看板に時刻表があり、確かに20分に一本のペースでバスがある。
立ち去るオーナーに礼を言い、係員らしきおじさんにここでバスのチケットを買えるのか?と尋ねると、中国語でまくし立てられ、バス停がざわつき始めた。何だ?何なのだ?
すると超片言の英語を話す男性が連れてこられ、中国語で書かれた簡易地図とバスの時刻表件注意書きの両面コピーをくれた。
しかし単語の羅列で何を言っているのかさっぱりわからない。
私はここぞとばかりに筆談と、行きたい場所を走り書きすると、その男性が英語と漢字のチャンポンのメモを書いて私に手渡してくれた。

だんだん私にも事情が飲み込めてきた。

ここ苗栗県客家が多いのだが、丁度今は客家桐花祭の最中であり、期間中の土日のみ主な観光地を回る無料のシャトルバスを客家団体が運行しているようなのだ!
今年の無料バスの運行日は4/30、5/1、7、8の4日間。
俺ってば、なんて幸運なのだろう?

さらにその男性と一緒にバス停の係員をやっていた女性が私と一緒にバスに乗り込み、なんと降りるところを教えてくれるという。
何でここまで親切にしてくれるのだ?
私は男性の必死のメモだけでもジンときていたのに、なんだが申し訳ない気分になってきたのであった。

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こちらが勝興駅。

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こちら龍騰断橋。

この辺りの経緯は、気が向いたら別途詳しく書こう。

ホテルに戻り、オーナーに丁寧に礼を言う。
疑って悪かった(とは勿論言わない)、お陰で素晴らしい観光が出来た、と。
オーナーも満面の笑みでまた来てね、という。
私は握手を求め、そして名刺交換をした。
この民宿開業以降で私は二人目の日本人だと言う。もし日本の知り合いで三義に来たいという人がいったらここを勧めると約束した。まぁ誰にでも勧められる宿ではないんだけど。

駅に行くついでに、バス停にも寄る。
すると私に一生懸命メモを書いてくれた男性は丁度弁当を食べていた。私はお陰で良い観光が出来たと心からの礼を言うと、男性は立ち上がり私に握手を求めてきたので固く手を握った。

なんか人の優しさが身に染みるな。

駅に向かって歩き出すと、何者かが私の肩を叩き、振り返るとその男性が私に紙パック入りのスポーツドリンクを差し出してくれていた。
「沢山歩いて汗かいただろ?」
的なことを恐らく言っていた。
ただでバスに乗せて貰っただけでなく、ただでスポーツドリンクまで貰ってしまうなんて。
私は重ね重ね礼を言い、再び握手をして別れた。

駅で切符を買い、電車を待つ間に私はスポーツドリンクを一気に飲み干した。
苗栗の猛暑ですっかりぬるくなってはいたが、渇いた身体にそのスポーツドリンクは染み渡った。
ぬるいぐらいが丁度いい。

もしもそれがよく冷えていたら、それこそ私は泣いてしまったかもしれない。

各駅停車で苗栗駅まで行き、そこで特急自強号に乗り換えて台北へ向かった。

台湾は本当に良いところだ。

いよいよ私の旅も終わろうとしている。

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