千倉の哲人ヘーゲル釣行…4/5千鯛丸

時として釣人を哲人に変容させる魔の海千倉沖。
 
かくいう私も前週の釣行実存主義を患った。
 
思索に耽る日々の中、借りた貸しは早急に返すべきであり、受けた屈辱は早急に晴らすべきであると結論、千倉の海人船頭に復讐を告げる緊急電話をかけたのであった。
 
今回で三度目となる千倉ヒラメ釣行を弁証法的に論ずれば、大時化の海で3枚を釣り上げた初回がテーゼ(正)であり、船中で唯一の丸ボウズを喰らった前回がアンチテーゼ(反)であり、今回の釣行がアウフヘーベン(止揚)ということになる。
 
故に今回は相反する概念を合理的に解決する視野の広さと、清濁併せ飲む度量の大きさが求められるのだ。
 
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手始めに私はロッドキーパーを購入した。
大人の階段を一段昇り、同時にルアー・アングラーとしての矜持をまた一つ失うこととなったこの判断もアウフヘーベンの一つの形である。
 
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千倉沖ではイワシの大回遊が始まっているようで、大量の鳥が集結、あちらこちらで鳥山が発生していた。
巻き上げ漁船なんてまるでヒッチコックの世界だ。
これはお魚さんたちのヤル気スイッチが入っちゃったかな~と期待したのだったが…。
 
「ダメだ~~~、底荒れしちゃってなぁ~~~んも食わないや~~~~~!」
 
マイクパフォーマンスが楽しいユルキャラ船頭が諦め気味に呟いたんだなっしー。
浅場の潮色は白濁し、前日までの南西暴風の影響が悪い方に残ってるんだなっしー。
 
西の海域はまだ海況が相当悪いとのことでウネリの中を東沖へと移動する千鯛丸、底荒れの影響が少ない深場を攻めるとのことで前半の主戦場は東沖60~80mだ。
 
前回根掛かりと勘違いして一気にイワシを丸呑みした魚を電撃アワセでばらした反省から終始手持ちで根掛かりを恐れず底スレスレを果敢に攻め続ける。
海底地形を細かく説明してくれるユル船頭のマイクアナウンスも聞き漏らさない。
 
ガツンと衝撃があって竿先がズドンと入る。根掛かりか?いや、魚かも。堪える、堪える、堪えているとグイグイ引っ張る魚の感触が!
 
キタ━━━━(°Д°)━━━━!!!!
 
竿を立ててアワセを入れてリールのハンドルを巻く。重い!
「何が出るかな~?何が出るかな~?」
まるで小堺一機のような陽気な船頭のアナウンスで私の魚に気付いた隣のお客さんが竿をキーパーにセットしてタモをもって駆け付けてくれた。
本当にロッドキーパーとは便利な代物である。
そして海面に姿を現したのは…
 
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じゃーん!
2㎏前後のナイスなヒラメ、いきなりのリベンジ成功!
 
その後も順調にキロ前後のヒラメを2枚追加。
 
良型のマトウダイも2枚キープしておかずはバッチリである。
 
後半は海も凪船頭は西沖の根周りに移動。
ヒラメ以外にもマハタやアカハタが良く混じるポイントとのことでヒラメは既に充分、マハタの欲しかった私には正に願ったり叶ったりの展開だ。
 
最大高低差が9mもあるようなキツイ根の中、やや高めにタナを取り根を交わしながら攻めていると
“ガツン!”
やっちまったか?
“グイグイ!”
魚だあああああ!
ヒラメとは異なる引き味、ハタか?遂にハタなのか?
口から浮き袋を吐き出して海面にポコンと浮いた黒っぽい魚は…
「デカいクロメバルだ~~~!誰かタモタモ!」
ユル船頭がアナウンスしてくれたが手元にタモがあったのでセルフ・ネットイン!
 
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初めて釣ったクロメバル。長さを測ると33cm、これは立派な尺メバルだ。
つぶらな瞳が愛らしい。
 
いや~、最高の一日だな~と既に大満足モードに突入していたのだが、沖揚がり寸前の11時30分、この日最大のドラマが訪れた。
 
良型ハタも顔を出すという水深40m程の根周り。
ハタ狙いならタナを2~3m、ヒラメ含めて何でも狙うなら底スレスレという船長からの指示にハタしか見えない私は当然2mタナを上げて待つわけだが、アップダウンが激しいのでマメに底を取り直さないとタナボケしてしまう。
その時も。
リールのクラッチを切り2m上げていたオモリを着底させる。ラインマーカーが丁度2m出たところで着底、タナはあっていたのですぐさま巻き上げを始めたその刹那、
“ズドン!”
「?」
竿を立ててハンドルを巻くと強烈な引き込みで2.7mの軟調ヒラメ竿がフルベンド!
 
デカいの、キタ━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━!!!!
 
「それ大きいよ~~~!バラさないように慎重にやって~~~~!」
 
こんな時でも船頭の口調はユルイ。そして操舵室から出てきてファイトシーンを撮影している!
これをバラしたら相当はずかしいぞ!
 
軟調の竿は完全に伸されているものの、弾性が逆に安心感となる。
少しずつポンピングしながら魚を浮かせて確実に巻いていると遂に姿が見えてきた!
 
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マハタ、3.35kg。
 
ここに千倉沖におけるヘーゲル弁証法が完結した。
 
 
 
 
【釣果】
5時10分出船、12時10分沖揚がり
ヒラメ3枚
(他マハタ3.35kg、マトウダイ2枚、クロメバル33cm)
 
【タックル】
ロッド:DAIWA 早舟ヒラメ M-270
リール:DAIWA SALTIGA-Z30L
ライン:PE3号、リーダー:フロロ40lb
 
【本日の総括】
「何も言えねえ!」
 
暗黒のボウズ釣行から一転、一週間後には同じ船でこんなにも最高な釣りが出来るとは!
 
やはり釣りにおいて最も重要なことは「諦めない心」であることを再確認した。
NEVER GIVE UP!
 
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魚も捌き甲斐があり過ぎて睡眠不足と相俟り身体はクタクタになったが、それは心地の良い疲れであった。