リクエスト釣行…1/20平塚庄三郎丸

「大切な知り合いの誕生日を祝うので、何か釣ってきて!」と頼まれれば、それはカワハギやアオリイカよりも尾頭付きの赤い魚であるべきだ。
 
私は敬愛する船長に新年の挨拶をするべく、金沢八景のとある船から竹岡へと出船し、3.5mもあるロング・ロッドを振り回してNHKの番組並みの巨大イカを捕獲しようと企んでいたのだが、そういう理由で急遽進路を平塚へと変え、その日46回目の誕生日を迎える先輩を祝う為に、46㎝のアマダイを狙うことにしたのである。
 
私の陣取る左舷に7人、反対側の右舷に6人、合計13人に留まり、日曜日ながらアマダイ乗合はイケメン船長操船の22号線1隻(とyakuza船長操船のJGFAイベント船も出ていたが…)で済んでしまったこの日の庄三郎丸。
 
いつもは港沖から始めるのが常なのだが、この日イケメン船長はいきなり30分近く船を走らせ、朝一から二宮沖90mダチから闘いをスタートさせたのであった。
 
こ、ここは!
 
忘れもしない、昨年の釣り納め釣行で人生初の50㎝超えのビッグ・アマダイを仕留めた海域!
否が応でも期待が高まっちゃう!
 
が…
 
う~~~~~~~~~~~~~ん。
 
この日はトラギスに妙に好かれてしまったようだ。
 
手巻きでこの水深を攻めている時にトラギスの猛攻を受けると、気力と体力が著しく奪われる。
なにしろ着底後斜めになったラインを立てて正しいタナを攻めるべくオモリで数回底を小突いてから1m巻いてアマダイを誘おうとする刹那、竿先に“ぷるる!”というトラギスのアタリが出てしまう。
 
アタリをかわして針掛かりを避けても、オキアミ1尾付けの針ではそれ以上の勝負は出来ず、その都度仕掛けを上げねがならないのだ。
静かながら着実に体力と気力を奪われる展開である。
 
「ぷるるる!」
なんだよ!またトラギスかよ!
ぞんざいにリールをガシガシ巻いていたら、上がってきた魚が赤みを帯びた白!
 
20㎝あるかないかの鼻ったらしアマダイだった。
 
しかしトラギスと思って早合わせしたのが良かったのか、針は口の皮1枚を貫通したのみでダメージ少なく、バケツで元気に泳いでいたので我がアマダイ史上初の本命リリース!
するとチビアマダイは意気揚々と相模湾の深い海へと帰っていった。
 
よかった。
良いことをした。
 
海の神様とは、このようなアングラーの善行を決して見逃さない偉大な存在である。
 
これで今日の釣りは好釣果に恵まれることは間違いない。
 
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・・・。
 
あれれ?
 
どうも逃がしたハナッタラシが感謝の気持ちを込めて友達を沢山釣れてきてくれたようで、外道に交じって本命は釣れるのだが、それらはいずれも内臓が出たり浮き袋が出たり針を丸呑みして針を外した途端に吐血したり。リリースしたいサイズであっても助かる見込みはなく、さりとてカモメのエサにするには忍びないのでキープせざるを得ないという「幼児虐待祭り」となってしまったのであった。
 
 
「わかりました。尾頭付きのアマダイの刺身を振舞います。」
 
自ら発した言葉が重荷になってきた。
やはり釣りは自分と自然との真剣勝負、他人のリクエストの応えようとするからこんな目に遭うのだ。
 
でも考えてみれば狙って釣れる魚じゃないよな。
安請合いするもんじゃないよ、マッタク。
 
心はほぼ完全に折れていたが、それでも手だけは動かし続けて魚を誘った。
それは諦めない心だったのか、ベストを尽くしたという自己弁護の為だったのか今となってはわからない。
 
でもそういう“釣ってやる”的殺気が消えた時に、えてしてドラマは起こるものなのだ。
 
13時を過ぎ沖あがり時刻が気になり始め、より一層諦念に支配され始めた時、誘い上げた竿にじわ~~~っと重みが伝わった。
そのままゆっくりと誘い上げていくと、途中で竿が止められ急角度にしなる穂先、そしてリールを巻くと確かな手ごたえが!!!
 
「良型、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
36㎝以上、51cm未満のアマダイの引きを感じる!
そう。間違いない!経験的に言ってこのアマダイは36㎝よりは確実に大きいけど、51㎝よりは明らかに小さい。
 
慎重に巻き上げると途中思い出したように三段引きをみせる魚、ハイ、アマダイに間違いないっす。
 
PEを全て巻き取りリーダーが5m、テンビンの下に大きな魚が付いて来ているのが見える!
デカいアマダイだが51㎝よりは明らかに小さい。
 
そんな心の余裕からテンビンを掴んで仕掛けを手繰ると、
「!」
魚の口から針が外れて落っこちてしまった!!!
 
あわわわわわわわ、と動揺していると隣のアングラーが冷静に浮いてる魚をタモで掬ってくれて無事にゲット!
船長もすかさず駆け寄ってきて「45cm前後はあるかな~。」とピンポイントで46㎝を狙っていた俺にとってドキドキしちゃうようなことを言う訳ですよ!
 
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【釣果】
7時出船、14時15分沖揚がり
アマダイ10尾(外道:トラギス、アカボラ、ムシガレイ、キダイ、サクラダイ)
 
【タックル】
ロッド:alpha tackle AIRBORN STICK30T-200
リール:SHIMANO SCORPION XT 1501-7
ライン:PE1号、オモリ:40号
 
【本日の総括】
目標には2cm及ばず44㎝だったけど、これがその日の最大魚!
まあこれでご容赦頂こうではないか。
 
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釣りを終えて帰宅し、ひとっ風呂浴びてからこの魚で昆布締めを作り、俺はパーティー会場へと急いだ。
 
アングラーにしか出来ない誕生日プレゼント、これも釣りをやることの幸せである。
その喜びを噛みしめながら、周囲の好奇の目を気にすることなく、発泡スチロールの箱を大事に抱えて電車に揺られていたのだった。