居眠り船頭、糞社長…11/24M之助丸

*ネガティブな内容につき一部伏字。書きたくないけど悪いことも覚えておきたい個人的な記録として公正な視点を忘れず記載するので、そういうの嫌いな方、どうか読まないで下さい。
 
 
あまり行く機会はないが、個人的に久比里の港には思い入れがある。
 
既に退職された会社のC調な大先輩チョイ悪H氏、既に鬼籍に入られた会社のろくでもない大先輩メチャ悪I氏。
この愛すべき二人のジジイに誘われて山下丸のカワハギ船に乗ったのが、俺の船釣りデビューだったのだ。
 
あれから僅か4年しか経っていないことが信じられぬ程俺を取巻く環境は激変し、一方で釣りに関しては思えば遠くへ来たもんだ的に深くのめりこんでいった。
 
全てはここから始まり、同時にここから多くのものを失うことになったとも言える。
 
 
そんな久比里のとある船宿で、俺が働く業界の釣り好きが集まる仕立て船に誘われた。
退職されてから久しく会っていないチョイ悪H氏も参加するという。
これは行かなくては!
 
今年カワハギを始めたばかりの会社の仲間でバンド仲間fIVEさんも誘って、総勢13名のハイシーズンにしては大名釣りともいえる楽しい釣りが出来るつもりだったのだ、前日までは。
 
 
この日の為にマイタックルを全て揃えたfIVEさん、リールにはPE1号を巻いているというので、経験的にリーダーを結んだ方が穂先にPEが絡むトラブルが減り、オマツリ(混んだカワハギ船では決して避けて通れぬ試練である)した時に解くのも楽だからと、出船直前に手持ちのフロロ5号を使って自慢のFGノットでラインシステムを組んでいた。
無事に結束完了、さてそれでは釣れたカワハギを入れるバケツを取ってこようかと乗船前にバケツが置いてあった操舵室の前に行くとバケツがない。
「?」
不審に思って船長にバケツの在り処を尋ねると、
 
「何で人の話を聞いていないんだ!もう全部降ろしちゃっただろ!」
という怒声が背後から。
 
振り返るとこの船宿の社長が憤慨した顔でこちらを睨んでいる。
そして追い打ちをかけるように、
「人の話はちゃんと聞け!それで幾つ足りないんだよ?」
 
客を客とも思わぬその傲岸不遜な物言いに呆気にとられて「二つだ」と答えると、おもむろに4つのバケツを俺に手渡す糞社長。
二つのバケツを俺とfIVEさんの足元に置き、残り二つを社長に渡そうとすると、
「その辺に置いとけ!」
との返答。
こちらも瞬間的に頭に血がのぼり、その糞社長の醜い顔面目がけて思いきりバケツをブン投げてやろうかと思ったがなんとか踏み止まった。
 
これは同じ業界で働く者同士の仕立て船、楽しくなければならないし、増してや幹事さんの顔を潰してはいけないのだ。
 
しかしテンション下がるよな。
こういう輩は、「俺の船に乗せてやってる」という感覚で客を見下している糞野郎なのだろう。
「俺は客だ」とデカい顔をして何をやっても赦されるつもりでいる迷惑な客と、本質的に同じ次元で生きている俗物なのだ。
 
カワハギ釣らせてくれる船なんて沢山あるんだぜ?
 
俺の船宿ポートフォリオから、1軒が完全に消去された瞬間だった。
 
竹岡を攻める事も少なくない久比里の船だが、幸いなことにこの日は剣崎直行となった。
竹岡は湾奥出船で攻めなれているポイント、やはりここまできたら剣崎のカワハギを狙いたいのが人情である。
 
 ところがね~。
現場着いてみれば予報以上に風強く、予報以上に波が高い。
 
そして“潮先だから”という粋なはからいでfIVEさんの為にミヨシから並んで席を取っていたのが完全に仇となり、開始30分ほどでfIVEさんの腰が砕け戦意喪失、そのままマーライオンになってしまわれニュー・タックルに入魂出来ぬままあまりにも短い釣り終了。
 
波風でアタリが取りにくい上に、カワハギの活性も低めでテクニカルな釣りになってきた。
 
そして早潮が流れることが多い剣崎沖の浅場、この日も若潮とは言え潮型が悪いのか道糸が真っ直ぐ立たずに少人数の割にはオマツリ連発、結構忍耐力が(色んな意味で)試される展開になってきた。
 
ところがこのオマツリ地獄、潮型のせいだけでは無かったことが判明する。
 
それは15mのこの時期にしては異例に近しい浅ダナを攻めていた時のこと。
ラインが徐々に横に流され、気が付けばほぼ真横にかっとび10m以上も余計にラインが放出されてしまっている!
流石におかしいと操舵室を見ると、
「!!!」
なんと船頭、爆睡してるじゃねえか!
 
これに気付いた操舵室真下に釣座を構えていたチョイ悪H氏、窓をバンバン叩きながら
「仕事中に寝てる奴があるか!」
と一喝。
引退したとはいえ、流石は元部長である。
 
しかし本当にとんでもないな。
 
たそがれ清兵衛でもあるまいし、居眠り船頭なんて初めて見たよ。なんたる緊張感の欠如。
“客が釣れていないと胃が痛くなる”とは多くの船長からよく聞くセリフだし、キャプテン勇治のように操船が荒っぽくなり、なんとか釣れる場所を探そうと次々とポイントを変えていく船長も多い。全てはホスピタリティの裏返しである。
 
ところが居眠り船頭、全く釣れていなくてもポイントの見切りが遅いし、おかしいなとは思っていたのだが、要は周りなんてちっとも見ていなかったってことなんだな。
 
あの社長にしてこの船頭、これがここの本質ってことで俺は結論付けた。
 
多くの常連客を持つ人気の船宿だし、俺が何を言っても変わらないのだろうが、乗りたい奴はこれからもドンドン乗ってくれ。
俺は二度と関わりあいたくない。「乗せてやる」目線の船には乗せてもらわなくって結構。そんなのロックじゃないぜ!
 
昼過ぎから徐々に凪てきて、マーライオン即身仏となっていた我らがfIVEさんもラスト1時間で復活、そして残りいくらもない時間帯に28センチ程の大物を釣り上げてボウズ脱出!
いや~、ホッとしたよ。
0と1を隔てる壁は、釣りの中で最も高いのだ。
 
沖あがりは午後3時。
 
船頭は沖あがりを告げることなくスパンカーをたたみ、港へ向けて船を出した。
3時上がりを知らない多くの人は沖あがりに気付かず、道具をしまっていなかった。
 
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釣果】
8時出船、15時沖揚がり
カワハギ14枚
(外道:ベラ)
 
【タックル】
ロッド:DAIWA極鋭カワハギ1454AIR
リール:SHIMANOステファーノ201
ライン:PE1号
 
【本日の総括】
わざわざ書くこともないかと思ったけど、楽しいばかりが釣りではない。
自分の為に忘れないように書いておいた。
 
逆に言えば、今まで俺は何の気なしに訪れていた船宿に運よく恵まれていただけなのかも知れない。
 
剣崎は海底地形が竹岡と異なり根が多いので、好きな宙釣りが有効だし良型の魚も多く、釣って楽しいポイントだ。
これからもたまにはここで釣りをやりたいと思うが、黄色い船だけには二度と乗るまい。
 
さて、冷静さに欠いてしまって釣果は14枚に終わってしまったけど、船中は1~14枚の貧果に終わってしまったようだ。
fIVEさんに5枚、お隣の釣り初体験の女性(実は10年ほど前に一度仕事をしたことのある方だった)3枚お分けして、6枚のみ持ち帰った。
 
28センチと26センチが混ざりおかずには十分である。
 
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刺身、肝乗せ炙り、湯豆腐と、これだけでフルコースの完成。
 
最近ことにはまっているのが小型を使った肝乗せ炙りである。
 
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香ばしい焼き目と溶けた肝の織り成すハーモニーが堪らない!
不思議とこのメニューは小型を使った方が旨く、今までは余程のことがない限りリリースしていた15センチぐらいの小さいサイズも必ず数枚はキープするようになってしまった。
やばいな、野毛屋スピリットを忘れつつあるか?
 
これから身がますます旨くなる個人的にはカワハギのベスト・シーズン、次は良い宿で気持ちの良い釣りをやりたいものである。