釣り談義…赤羽「米山」

釣りの楽しみはそれ自体に留まらない。
 
道具を揃える楽しみ、道具に拘る楽しみ、釣り前夜の高揚感、研究の楽しみ、船宿と出会う楽しみ、思い出を反芻する楽しみ(主にその為に拙ブログは存在する)、旅の楽しみ、一期一会の楽しみ、食べる楽しみ、etc...。
 
そしてもう一つ忘れてならないのは飲みながらする釣り談義の楽しみだ。
 
年末から公私共に忙しいという我が釣友DDVセンパイ、殆ど釣りに行っていないというので会社帰りに待ち合わせて赤羽で飲むことにした。勿論酒肴は美味しい料理と釣り談義である。
 
開店間もない赤羽二郎を後ろ髪引かれながらスルーして我々が向かった先はもつ焼きの名店「米山」。
この世に現存する全ての居酒屋の中で俺が最も好きな店である。
 
ところでインターネットの功罪は多々あるが、地元のひっそりとした美味しい飲み屋がインターネットの情報伝達能力により全国区に知名度が上がってしまいうことは地元民にとっては“罪”なのだと思う。
10年程前に毎週通っていた頃の地元の常連さんは今では殆ど見かけることなく、連日遠方から押し寄せる若いネットユーザー達が客の中心となっているように思える。
こういう状況というのは、なんとなく切ないと言えば切ない。
かくいう俺も地元民ではないし、またインターネットのお陰で様々な名店と出会うことが出来たのだから、今の米山の行列や客層を嘆く資格は無い訳だが、新丸子にあるもつ焼きの美味しい某店が「店内・外観・料理全て撮影禁止、ブログへの記事アップ禁止」を高らかに宣言したのも昔ながらの常連を大事に思う気持ちからであって、違和感を感じながら米山の行列に加わっていた時に、その店の店主の気持ちが良く分かる気がしたのだ。
 
 
さて、もつ焼き店において店の実力を測るに最適なメニューはなんと言ってもレバ刺しであるが、そして焼き物の串にさされたまま提供される米山のレバ刺しは勿論滅法旨いのだが、俺は毎回スルー。
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ここでの必食はなんと言っても半焼きレバである。
 
“半焼き”といっても実際には表面を炙っただけの二分焼きぐらい、すると甘味と香りがレバ刺し以上に豊かで恐ろしく旨い!しかも二郎とは異なり素材の良さもお母さんの焼き加減にも一切のブレがない。
『今日のはイマイチだったな…。』と内心がっかりすることがただの一度もないのだ。
これは凄いことである。
 
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そして胡椒がピリッと効いた、でもほのかに甘味の香るナンコツ入りのつくね、これは俺の“つくね観”を根底から覆した凄まじい1品。米山の料理は他店では代替不可の孤高のメニューばかりだが、中でもこのつくねはその弧高度が高い。
 
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おおっと、忘れちゃいけないのが透き通ったかつおだしスープの「あっさり煮込み」。
寒い冬場にはしみじみと旨い。
ちなみに奥にチラッと写っているたまご合え(半焼きのハラミにオニオンスライスと卵黄を和えたもの)も激ウマだ。
 
美味しい料理と酒に舌鼓を打ちながら、我々は釣り談義やら文学談義やらミッドライフ・クライシス談義やらに花を咲かせた。
全ての串焼きが2本単位で提供されるここ米山は、1人で来るのではなく、団体で来るのでもなく、共に男の年輪を刻んできた者同士が静かに語り合う為に来るべき店であると思っている。
 
ガキが食うには10年早く、女性グループが来るのはお門違い。
オッサンであっても旨いもつ焼きと旨い酒にリスペクトの無い人間にも足を踏み入れる資格はない。
 
店は古くて汚くとも、俺は自分にとって大切な人間としか絶対に訪れないと決めている特別な店なのである。
 
 
二次会は赤羽二郎に寄るほどの若さも胃の余裕もなく、無難に近隣の居酒屋「八起」に行った。
そして軽いツマミをアテに更に酒を流し込みながら、飽く事無く閉店時間まで釣り談義を続けたのだった。