原点・・・12/28野毛屋

右肩下がりのカワハギの釣果に心を痛めて生きる希望を見失ってきた俺は、自らの沖釣りの原点とも言えるアオリイカを狙って失われた自分自身を取り戻すことにした。

まるでマルセル・プルーストのような釣行である。

我が社はこの前日に納会を済ませているが、世間的にはこの日が仕事納めの企業が多いようでアオリ船は乗客8名と少なめ、俺の釣座は左舷トモ二番手」だ。

定時に出船した第二忠丸が最初に向かったのは下浦沖。
この日はここを起点に久里浜→鴨居→観音崎と神奈川県寄りを北上するコースを辿った。
イメージ 1

光量の少ない冬の朝はキリっとした空気感。

「18m!」
この日の最初の指示タナは12月末にしては随分と浅いようだ。
「水温がまだ高いからイカが深場に落ちきってないんだよ。」
と俺の感想を見透かしたかのようにキャプテン勇治が呟く。

潮止まりの時間帯だがまだ若干の上げ潮が残っており、イカはミヨシから乗り始めた。

しかし何処でも単発で拾い釣りの様相である。

1時間程沈黙を続けた俺の竿が突如しなったのは下げ潮の流ればな、9時過ぎのことだった。
しゃくって竿を戻した途端、エギがひったくられるようにラインが走り、慌ててアワセると
“ズドン!”
“キタ―――――!!!”
ジェット噴射で真下に潜るような引きをみせるのがアオリだが、コイツはまるで魚のように横に走る。
マズイ、これは触手一本に掛かっている証拠である!
ドラグをやや緩め、慎重に巻き上げる。
しかし中オモリを掴んだ瞬間に事件は起こった。
イカが船の下へと走り、ハリスを手繰る間もなく船に張り付いてしまったのだ!
身を乗り出すとイカの姿はハッキリと見えている。
駆けつけた中乗りエストシ君(仮名)がタモを使って取り込んでくれようとするが、ガッチリと船に張り付いたアオリイカはビクともしない。
そこでキャプテン勇治は全員に竿を上げるよう指示すると、俺にハリスのテンションを緩めるように告げイキナリ船をバックに急発進させた。こうすると驚いたイカが船から離れることがあるらしい。
「!」
確かにイカは船から離れたが、同時にエギも離してしまい敢え無くバラシ。
う~~~ん、どうやらまだ悪い流れは継続しているようだ。

イメージ 2


その後またまた釣れない時間が1時間程続いた。
チップが1回あったが上手く針掛りせず、生まれついてのペシミストである俺は早くもボウズが頭を過ぎり始めたが、とりあえずしゃくる手を止めては釣れるものも釣れないので全力で短く鋭いシャクリを繰り返す。
すると、
“ズドン!”
何の前ぶれもなくしゃくった俺の竿がしなった!
“キタ-----!”
しかし引きが弱い。上がってきたのは本命アオリイカであったがサイズは目測300gと小さい。
まあそれでもホッと一息といったところだ。

その後も連チャンが殆どなく、終日拾い釣りに徹した一日となったが、人数が少ないこともあってか平均にイカの割り当てが回った。
頭数が伸びるよりも全員に獲物を釣らせたいキャプテンにしてみれば、悪いことではなかったと思う。

イメージ 3


途中根掛かりで思い切り道糸を引っ張ったらチチワが切れて中オモリとアタリエギをロストしてしまう不運(と言うか暫くチチワを結びなおしていなかった自分が悪いのだが…)に見舞われたが、終わってみれば0.3g、0.5g、0.8g、0.95g(惜しい!)と良型交じりで4杯の本命を釣り上げ、非常に満足いく釣行となった。
イメージ 4


【釣果】
7時15分出船、15時30分沖揚り
アオリイカ4杯

【タックル】
ロッド:マニアス・アオリスペシャル350
リール:カルカッタコンクエスト301F
ライン:PE2号、ハリス:フロロ5号

【ヒット・ルアー】
YAMASHITAエギ王Q LIVE ラメオレンジ3.5号、ネンブツダイ3.5号

【本日の総括】
船中釣果は2~5杯の33杯、全体的に型も良くて非常に良い日にあたった。

そしてなんとなく、というかハッキリとスランプを感じていた最近の沖釣りライフであったが、この日快心の釣りが出来たことで悪い流れは断ち切れたと思う。
やはり悩んだ時には原点に立ち返ることが何よりも重要なのだ。

野毛屋の年内営業は残り二日間あるが、一足先にこれにて俺の2011年野毛屋参詣は終了。

振り返ればウイリーで丸坊主に始まり、タイラバでも良型に恵まれず、フグでもツ抜けはおろか片手超えすらないなかなか不毛なシーズンを送ってしまった気がする。
それでも3月の未曾有の大震災の後、釣りの楽しさの再認識や自分と釣りとの係わり方について、この船宿から教わったことは数多い。
こうして無事に一年間楽しく釣りを続けてこれたことが如何に幸せなことか、年の瀬に改めて感慨深く思った。

いずれにせよ敬愛する船長、大好きな船宿、この先どんな釣りライフを送ることになるかは想像もつかないけど、ここが俺の沖釣りの原点であることはいつまでも変わらない。

来年もまたお世話になります!