漁火・・・・2/26沼津 舵丸

金曜日に吹き荒れた春一番は暖かい空気と共に大量の花粉を運んできて、俺の体調は一気に悪化したのであった。

鼻水鼻詰まりのせいでその夜は細切れ睡眠、朝起きても頭が重くてスッキリしない。

恐らくはその影響だろう。

東名沼津インターで降りるべきところ、俺は何故か余裕でスルー、次の富士ICまで行ってしまった。
そしてカーナビが付いているにも関わらずその後も地味に道を間違えまくり、おまけに沼津市内の道は激しく渋滞、港に着いたのは集合5分前の16時55分であった。

一つ上手くいかないと、連鎖的に全てが上手くいかなくなる時があるが、この日は正にその典型のような日であったのである。
イメージ 1

我々が乗り込むと程無く出船となった。危なかった~~~。

“タチウオのジギングに興味がある”という友人(仮にA君)を誘って金沢八景・太田屋の午前タチウオ船に乗ったのは1月9日。
しかしこの日は22人ものアングラーが乗船していてオマツリが酷く、しかも船上の活気と反比例するかのようにタチウオの活性が低く、友人(仮にA君)はデビュー戦をボウズで終えてしまったのだった。

リベンジの機会がないまま東京湾冬タチウオは終了してしまった為、今だ活況を呈する駿河湾に狙いを定め、お互いの予定を調整し、さらに気まぐれな天気との兼ね合いもあって(2週前にも予約していたものの当日急な天候の悪化で出船中止になった)、ようやくこの日出撃が叶ったのだが・・・。

普段は御蔵島などの遠征に使われるという第一舵丸は19.9t、19人分のベッドまで完備された超大型船だ。
ここに片舷7人の総勢14人はある意味大名釣り。
それでも反対側の特定の餌釣り師と頻繁にオマツリを繰り返したのは潮の加減か何なのか?


この日の駿河湾沼津沖はベタ凪、そして大量のタチウオ船が集結して幻想的な雰囲気を醸し出していた。
イメージ 2


夜釣りは初めてだが中々趣のある風景だ。

これで魚が釣れれば文句はないのだが・・・。

・・・。

釣れない。
アタリすら無い。


餌釣り師はぽつん、ぽつんと釣っているが、ルアーへの反応は極端に悪い。
リーリング速度を変え、ジャークのパターンを変え、時折ポーズを入れてみる。
底の浅い引き出ししか持たぬ俺は、考え得る全ての方法を試してみたのだが、魚からのコンタクトは全く無かった。

「こりゃ駄目かも知れない・・・。」
口にこそ出さなかったが、ここまで悪い流れが続いており、かなり弱気になってきた。

そして何も釣れないまま3時間以上が経過し、我々の口数は極端に減ってきた。
幽霊魚の異名を取るタチウオ、はまらなければボウズを喰らっても仕方がない。
しかし、“魚影が濃い”との情報を得て遠路遥々(と言ってもたかが100kmちょっとだが・・・)やって来た我々には、ボウズは許されないのだ。

・・・。

万策尽きてしまった俺は、まだ使ってないジグを試すしか打つ手がなくなった。
そしていかにも釣れなさそうな地味なジグを何の期待もなしに使ったら・・・

“フワッ・・・”
ジグが海底に着く前に糸フケ、
「これは!」
と思い、サミングして力いっぱいアワセると、
“ドンッ!”
“キターーーーーー!!!”
バラしたくないという願いが強過ぎたのか、上がって来たタチウオはリーダーがグルグルと巻きついた状態だった。サイズは指3.5本~4本といったところ。遠征したのだからデカイのが欲しいところだが、当然そんな贅沢を言っている場合ではない。

フックを外してジグを再投入。
するとまたフォール途中で糸フケが!
サミングしてすかさずアワセ、すると
“ドンッ!”
“連チャンでキターーーーーー!!!”
しかしコイツは友人(仮にA君)のラインとオマツリしながら上がってきやがった!
とりあえず獲物を取り込みオマツリを解こうと思ったら、
「ゲゲゲ!」((c)水木プロ)
なんとこのタチウオ君、友人(仮にA君)の道糸をガッツリ噛んでいやがる!
無理に離そうとすると糸が切られると思い、キッチン鋏で頭を切り落としたのだが…
“プツン…”
“ポキン…”
「あああああああ、道糸が切れたと同時に友人(仮にA君)の心が折れる音がハッキリ聞こえたよおおお!!!」

隣りから恐ろしいまでの負のオーラが漂って来る。
そのオーラは明らかに俺を責めているように思える。

…。

…もう地獄である。

俺は焦った。
ここでもう一度ボウズを喰らったら友人(仮にA君)はきっともう俺と遊んでくれないに違いない。

信心と無縁な俺だが、祈った。全力で祈った。最早祈るしかなかった。
『おお、神よ、仏よ、キャプテン勇治よ、お願いですから友人(仮にA君)に1本釣らせ給え~~~~~~!』

“ドンッ!”
彼のSHIMANO JOGBROSが初めて弧を描いた。
そして海面に姿を現したタチウオは、口に綺麗にテール・フックが掛かっていた。
しかし何故か取り込みに躊躇する友人(仮にA君)。ここでのバラシは結構多いというのに!
「一気に抜き上げて、一気に抜き上げてえええええ!!!」
悲鳴のような絶叫のような声を発した俺はまるで狂人のよう。
そして覚悟を決めてゴボウ抜きにした友人(仮にA君)の獲物は無事に彼の足元へと落下した。

安堵という言葉では物足りないくらいに安堵した俺は以降廃人と化し、沼津からの帰りの道もまた間違えまくったのであった…………。

【釣果】
17時15分出船、22時30分沖揚がり
タチウオ3本

【タックル】
ロッド:TENRYU OCEANIA OC581B-4
リール:Abu Garcia Salty Stage REVO BJ-L
ライン:PE1号、リーダー:フロロ6号、先糸フロロ12号

【本日の総括】
所変わればなんとやら、初めての駿河湾夜タチウオは同じターゲットとは言え東京湾のそれとは釣り方が全く異なる印象だ。
結局この日は最後までパターンを掴む事が出来ず、惨敗に終わった。
様子が良い時に是非再チャレンジしたいところだ。

ところで土曜日の昼過ぎに出発しその日の深夜に帰宅するこの釣りは、金曜日に深酒が出来る上に日曜日も有効に使うことが出来るというのが非常に良い。
我が沖釣りライフの新たな選択肢として加えておこう。