2011年初映画~初とっちゃん

思えば映画というものに昔からあまり馴染みがない。
例えば上映時間120分の映画を観るとなると「今から120分拘束されるのか」と考えただけで何とは無しにその映画自体を観る前からウンザリしてしまうのだ。
読書や音楽鑑賞であれば自分のペースで進めたり続けたり止めたり出来るけど、“映画”という表現形態の“完璧に作り手のペースに合わせなければならない”という閉塞感が性に合わないのかも知れない。

ただ、どれだけ自身が映画と馴染みが薄くても、そして原作への思い入れが強いから件の映画を観たら失望するに違いないとわかっていても、やはり観ない訳にはいかなかった。
それが「ノルウェイの森」である。
18歳の頃、「自分の37歳の誕生日には絶対に読み返そう」と心に誓って実際に37歳になった時にそれを実践した、それが「ノルウェイの森」という小説である。
俺は映画評論家ではないので、批評のようなものは書かない。
しかしあえて一言感想を言うならば、まるで中国の遊園地のようだなと思った。
つまりは似て非なるもの、まるで贋作のようだと感じたのだ。

相応の覚悟をもって臨んだけど、失望はそれを軽く上回った。

そしてその失望と呼応するかのように京浜東北線が車輌火災だとかで運転を見合わせており、俺は品川駅で足止めを食らわされて更に殺伐とした気分になったのだった。

駅員に尋ねたところ「運転再開のめどが全く立たない」とのことで、振替乗車券をもらって京急線に乗り込み、京急蒲田で降りた。
そこで思い出したのだが京急蒲田には久しく訪問していない立ち飲みの名店、「立ち飲みとっちゃん」があるのだった。

ピンチをチャンスに変えること、不運の中に幸運を見出だすこと、変更を余儀なくされた予定のバックアッププランを即座に策定すること、それが不遇な中間管理職を全うする上で重要な資質なのだ。

まずは生ビール、そして胡椒のピリッと効いたマカロニサラダを頼んで人心地。
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続いて焼き物の作戦にとりかかる。

1本80円の激安プライスなのでそんなに慎重になる必要もないのだが、熟考の末にレバー、つくね、てっぽうなんこつ、カシラとオーソドックスに攻めてみた。

「お待ちどうさま。レバーは軽焼きにしておきましたよ。」
「!!!」
なんと店主=とっちゃん、常連とはとても言えないような俺如きの好みを覚えていてくれたとは!
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災い転じて福となす。

旨い酒とつまみ、そして高いホスピタリティーに癒されて帰宅する頃にはすっかり上機嫌になっていた。

ま、俺なんて所詮その程度の単純さしか持ち合わせていないのだ。

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オリジナル・ホッピー・グラスがイカシテルのさ。