あらゆる種類の釣りは独自のシステムを有している・・・11/14野毛屋

その日いつもよりゆっくりめに船宿に到着すると既にcalmさんは到着されており、俺の釣座も確保して下さっていた。

野毛屋釣船店実に64回目の参詣(あ、1回出船中止があったから正確には65回目というべきか?)にして初めて乗船する第三忠丸は、7時15分に6名の客を乗せて出港。
右舷トモにcalmさん、2番手に俺というフォーメーションだ。

曇ってはいるが、風は無く波も無く気温も低くない。絶好の釣り日和だ。
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出船なう。
ベタ凪の海を全速力で疾走した船はアシカ島のすぐ脇をすり抜けて下浦沖へ到達。
そういえば毎週のように東京湾で釣りしてるけど、久里浜以南に来るのって久し振りのような気がする。

さてコマセ釣りである。
calmさんがタックルをセットしてくれロッド・キーパーをセットしてくれコマセを入れる笊をセットしてくれオマケに自作の仕掛けまで提供して下さった。(これもある意味大名釣りか?)
「・・・。」
しかしスマート・ルアー・マンの俺(冗談ですよ、冗談!)には初めて触れるものばかり。
ロッドキーパー?サニービシ?暴力装置?何をどうすりゃいいんだ!?
まずはcalmさんにコマセの詰め方とカゴの穴の調整と基本的なしゃくり方を教わって、いざ実釣開始!
すると俊之船長が操舵室から出て来て、「ちょっと貸して」と道具を手に取りしゃくり方を実践でレクチャーしてくれた。ふむふむ、と思って見ていると
「あっ、掛かった!」
と言って突然道具を俺に渡したのだった。
「エーッ!」
こうして人生初のハナダイは船長が掛けた魚を取り込むというなんとも微妙な形で手にしたのだった・・・。

ところでルアー・キャスティングから釣りを始めた者の常としてご多分に漏れず俺も右投げ左巻き。スピニングもベイト・リールも全て左巻きで統一している為、左手でロッドワークを行い右手でリーリングする動作がどうもスムーズにいかなくて慣れるまでぎこちない動きになってしまう。まるで左利きを矯正されている子供のような気分だ。

ところがこの日のハナダイの活性は異常なまでに高く、そんなヘナチョコしゃくりの俺の仕掛けにもバンバン食ってくる。
俊之船長も「魚探が反応で真っ赤だよ!」と興奮気味。(この船長もまた釣りに熱く、やはり血は争えないというか、野毛屋の野毛屋たる由縁を改めて感じたのであった。)
しかしアワセが悪いのか悲観的な性格が悪いのか、ハナダイさんが折角食って下さるのにやたらとバラシが多かった。

そんな状況だから周りは釣れまくり状態。
calmさんも俺の手前マツリ解いてくれたり(スイマセン・・・)、イナダが掛かった時にはタモ入れしてくれたり(アリガトウゴザイマス・・・)、tweetしたり、写真撮ったりと釣り以外にも結構な時間を割いてどちらかと言えばノンビリと釣りをされていたのにバケツはどんどんハナダイで埋まっていった。
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2号ハリスで上げるイナダはスリリング!

しゃくって止めた竿に“コンコン!”っと小気味よいアタリがきて、アワセを入れるとこれまた小気味よい鯛の三段引き。やべえ、楽しい!コマセ釣りといえば指示タナ合わせてコマセ振って、あとは置き竿にして漫然と待つような退屈な釣りを勝手に想像していたのだが、ウイリー釣りは底から休みなく誘い上げてアタリを出していく攻めの釣りで、指示タナを2往復したらコマセが空になるので仕掛けを巻き上げてコマセを詰め直す為ず~っとリールは巻きっぱなしと結構忙しく、技術も体力も必要な面白い釣り方だという事がわかった。何事も思い込むことは良くないし、実践してみないと本質は掴めない。

後ろから船長、右隣からcalmさん、優れた先生2人から随時アドバイスを頂きながらの釣りだったので、バラシまくりながらも何とか数を伸ばして1時過ぎにツ抜けしちゃった!
いや~、ボウズ覚悟で臨んだのにまさかのツ抜け、こりゃ出来杉君だ!
釣果十分、釣り方は何となく分かってきた、ということでここでマイ・タックルにチェンジ!
これは“自分の道具で釣ってみたい”という欲求を満たし、“自分の道具で釣れるのか?”という実験を兼ねてのこと。もし実験が成功すれば今後は一人で来ることも可能じゃないか!

5フィート8インチのジギング・ロッドではやや長さが足りず、バット・パワーも強すぎるのでソフトにしゃくらないと仕掛けが動き過ぎてしまうようだった。一方PE4号を巻いてあるSALTIGAはレベル・ワインドが無く、ラインも10m単位で色が変わるだけで1m毎のマーカーが無いタイプではあったが、底からタナを取る釣り方なので1回転あたりの巻き取りが約80センチである事を理解していれば全く問題なく使えた。
慣れてきたらアタリも出せたし釣れもした。こりゃイケるかな?

トップは35枚まで数を伸ばし、船中6人で11~35枚の合計124枚という爆釣DAY、calmさんは余裕の釣りを展開しながらも流石の22枚(俺が居なきゃ30枚は固かっただろう>_<)で、俺もなんと12枚!イナダ2本のオマケまでついておかずは充分、船は余裕で30分早上がりとなった。
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【釣果】
7時15分出船、14時30分沖揚がり
ハナダイ12枚、イナダ2本

【タックル】
ロッド:TENRYU OCEANIA OC581B-4
リール:DAIWA SALTIGA Z30L
ライン:PE4号

【本日の総括】
「あらゆる意味のある行為は独自のシステムを有している。」by HARUKI MURAKAMI

生まれて初めてのウイリー五目釣りを終えた時に俺の脳裏にはこの言葉が浮かんだのだった。

ルアー・キャスティング、タイラバ、エギング、ジギング等々、自分が好んでやってきた釣りはいずれも非常にシンプルなタックルとシステムで釣る釣方で、一方このウイリーはそれらと全く異なる進化と深化を遂げた釣り方だと思った。

電動リールを使うわけでもないのにPE6~8号というまるでキハダマグロ狙いのような太いラインが推奨される時点で敷居が低いとは言い難いが、実際にやってみたらそんな事はなくて初心者でも充分楽しめる釣りであった。

そして言わずもがな奥も深い。

この日殆どのハナダイは緑色のウイリー針に食ってきた。
calmさんにお聞きしたところ澄み潮に効く色、濁り潮に効く色という基本があり、更には自分だけのアタリ・カラーを追い求めて釣り人は仕掛けを自作するようになるのだそうだ。
この面白味はルアー・フィッシングに相通じるものがある。
則ち俺がハマル要素は多いという事だ。
 


かねがね趣味にはある程度のルールと制約があった方が面白いと思っている。
(それは俺が金持ちではないからなのだが…。)
一口に“釣り”と言ってもそこには様々なターゲットがあり、また同じターゲットを狙うにしても様々な釣り方がある。当然釣り方によって道具もまるで異なる。
色々やってみるという生き方もあるだろう。
しかし限りある、というより極めて限定的な可処分所得しか持ち得ない哀しみのヒューマン・キャトル・サラリーマンである身には、限定的な世界を深化させていく方法論が現実的であり、性格的にも“広く浅く”より“狭く深い”ことを好むこともあって、そこで釣りに関しては“ルアーで釣れるターゲット”のみを狙うという事を当初の前提としていた。


しかし前にも書いたが“運”と“縁”を大事にしなければ世界が拡がらないのも事実だ。チャンスは活かさなければ人生は面白くない。


俺は極めて限定的な世界に生きているが、その限定的ヴィジョンは外的要因によって決まるものではない。
ヴィジョンを閉じるも拡げるも内的要因によって決まるのであり、そういう意味では生き方も釣り方も主体的である、というかありたい。
と願っている。