寄らない訳にはいかぬ・・・赤羽「米山」

ちょっと前の事だけど、出産を機に会社を辞め旦那の実家のある地方都市に引っ越した昔の仕事仲間が久々に上京するというので一緒に飲む事になった。
乳児を連れているのでディープな店に行く訳にもいかず(母親稼業は大変だ)、彼女が宿泊しているビジネスホテルに併設の居酒屋で飲むこととなった。ロケーションからいって店には何の期待もしていなかったのだが、食べ放題飲み放題で5000円というリーズナブルな料金設定の上、メシも悪くないしビールはなんとプレミアム・モルツの生だった。


昔話に花が咲き、愉しいひとときを過ごして宴は9時頃に終了、子連れなので当然二次会などはなく、そのままお開きとなった。

しかし、帰りに仲間と一緒にプラットホームで電車を待つ間に俺は何となく違和感に捕われ始めた。
そして俺が乗るべき列車と反対方面に向かう列車がホームに走り込んできた時に違和感の正体がわかった。そうだ、ここは板橋なのだ。2駅先は赤羽じゃないか!

俺は仲間に別れを告げて一人赤羽へ向かった。
そんな訳でやって来たのは赤羽にあるやきとんの名店「米山」だ。板橋で飲んで、しかも少々飲み足りないのであればここに来ない訳にはいかぬ。
生憎カウンターは満席だったが、外の簡易テーブルが空いていたのでマスターに断って釣座を構える。

半焼きメニューを始めとする人気の品は殆ど終わりと言われたが、必殺必食のつくねは幸いなことに残っていたのでつくねとアブラを2本ずつ、そしてホッピーを頼んだ。

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旨い。
本当に旨い。

満席だったカウンターに空きが出来ると、マスターはわざわざ俺を中に招き入れてくれた。

カウンターに座って本も読まずテレビにも目もくれず、ただボーッとしながらホッピーをチビチビ飲んでいると、何故だか俺は自分自身が完全にリラックスしている事に突然気が付いた。

こんなに晴れやかな気分になったのは何ヶ月振りだろう。

例えるならば、知らぬ間に迷い込んでしまったいつ果てるとも分からない延々と続くかと思われた漆黒のトンネルからいつの間にか外に出ていた、そんな感じだ。
時刻は夜遅く辺りも真っ暗だったので、いつの間にそこを抜けたのかが自分でもわからなかったのだ。


ホワイトリカーを使ったこの店のホッピーは素面で飲んでも相当に効くが、すでに充分に酒を飲んでから訪れたこの日は2杯飲んだらもうヘロヘロ。

サクッと会計をしてもらい、京浜東北南行電車で帰路についた。
また近いうちにここを訪れたい。

この店がもっと近くにあればいいのに、と俺はよく思っていた。
でもこのぐらい距離があるからかえっていいのかもしれない。
ふとそんな気がした。