みぞれ混じりの極寒アオリ・・・2/13野毛屋

天気予報では曇りのはずだったのに、車を出した途端に細かい雨が降り始めた。

『予報は曇りだしそのうちに止むだろう』と軽く考えていたのだが、霧雨は車を走らせているうちに本降りの雨へと変わり、野毛屋に到着した時点でも止む気配は全く無かった。

先行者3名、とりあえず俺は右舷大トモの釣座札を取って、出船時刻を待った。

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本日の先発エギはこんな感じだ。

定時に出港した第二忠丸が40分の疾走の後にスロー・ダウンしたのは鴨居沖。
キャビンから出ると、
「!!!」
なんと雪が舞っているじゃないか!
しかも北風ビュービューでとにかく寒い!
「こんな状況で釣れるのか・・・?」
そんな俺の疑問はあっさりと覆される。

開始早々、
「一人巻いたよ!」
とアナウンス。そして、
「アオリ型を見ましたから。」
左舷ミヨシでいきなり本命が上がった!
更に、
「もう一人きた!」
左舷の真ん中で竿を出していた中乗りエストシ君(仮名)が続けて本命をキャッチ。
更に更に、レンタル・ロッドで挑んでいた右舷ミヨシ2番手のアングラーまでも本
命を釣り上げ、最初の流しでいきなりの三連チャンだ!

「おおい、何やってんだよ!船は後ろに流されてるのに大トモで釣れねえなんてよ!」
操舵室の後ろの窓を開けこちらに向かって叱咤の檄を飛ばすキャプテン勇治。
風は北風潮は下潮、おまけにこの日は大潮で船は勢いよく南方へと流されていた。

イカにノリッ気があるから3~4秒に1回鋭く短くしゃくって下さい!」
と興奮気味に船長のアナウンスがあったのだが、この後しばらくイカからのコンタクトは無かった。

しかし寒い。
とにかく寒い。
尋常じゃなく寒い。
雪はいつしかみぞれ混じりの雨へと変わったが寒いことにかわりはなく、フィッシング・グローブから突き出た3本の指は冷たいを通り過ぎて痛い→痺れる→無感覚と、まるで凍傷を負いつつあるかのように酷い状態へと陥っていった。

手がかじかんでエギを交換することすら困難になってきたが、早上がりの可能性もあるし、何より早いうちに本命釣って精神的に楽になりたくて、俺はこまめにエギをチェンジして探り続けた。

指示タナ30mの浦賀ブイ近辺のポイント、エギはマーブル・トマトをチョイス。
しゃくり始めたその刹那、
“ドンッ!”
“キタア~~~~~!”
竿はフルベンド、こりゃ本命でしょう!

姿を現したのはやはりアオリ、サイズは目測6~700gってところか?
まあまずは一安心。

しかしこの流しも単発で終わり、後が続かない。

ただでさえタフコンであることに加え、困った事がもう一つ起こりつつあった。
それは俺のウエア。
天気予報が曇りだったので、防寒性は高いものの防水性に著しく問題のあるウエアを着て来てしまったのだ!
弱点を補うべく表面に防水スプレーを散布してあるものの、この本降りの雨を受けて徐々に水分が浸透してきているのがハッキリとわかってきた。
水分は体温を奪い、俺はみすぼらしい捨て犬のように断続的に身震いをする始末。
『しばらくキャビンで雨宿りしようかしら?』
そんな弱気な考えが頭をもたげたその刹那、
“ドンッ!”
“ナンカキタアアアアア!”
引きの感じからスミイカかと思いきや、上がってきたのは45㎝程のヤリイカだった。

おかず充分。もう限界だ。
潮は上潮へと変わり、右舷トモの俺の釣座は潮上に、もうこれはキャビンで休んでいる方が得策だろう。

しかし、そんな俺の弱気を見透かしたかのように、用を足す為に操舵室から出て来たキャプテン勇治は俺のところにやって来て、
「中もエライ寒いぞ、今日は。釣りやってる方がよっぽどあったかいな。
「・・・。」
見事な先制パンチ、これで俺は釣りを止める訳にはイカなくなった。
更に、「潮先の人がみんな派手なエギ使ってるんだから、目先変えて暗色の方がいいぞ。アニキの息子(=中乗りエストシ君)も焦げ茶色のエギでさっきアオリ釣ったし。」
とアドバイスまで貰っちゃう始末。
ターゲットと対峙する真摯な姿勢、これもまたキャプテン勇治スピリットなのだ。

アドバイス通りに深緑のエギにチェンジした第一投目、指示タナに仕掛けを落としてしゃくっていたら、
“ドンッ!”
“ホントにキタアアアアア~~~~~~!”
上がってきたのは本命アオリイカ。しかもサイズアップに成功だ!
“釣った”と言うより“釣らせて貰った”1杯、またしても俺は男の生き様を学ばせてもらったような気がした。

気が付けば防寒ウエアの下のジーンズもトレーナーも救いようの無いほどにグショ濡れだった。

もうやるしかない!

俺は土井たか子のような悲壮な決意と根拠のないポジティブな姿勢をもって自らの退路を絶ち、以降沖揚がりまで一心不乱にしゃくり続けた。

途中船はマルイカの群れに当たり、俺も立て続けに3杯のマルイカを釣ったが、その後は本命を釣ることなく沖揚がりの時刻を迎えたのだった。

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アオリ→ヤリ→アオリ→マル→マル→マルとイカ五目の様相。

道具を片付けていると、キャプテン勇治が俺のところにやって来て、
「アオリ2杯の他何釣った?」と珍しく釣果を尋ねた。
マルイカ3杯にヤリイカ1杯だと答えると、急に後ろから俺の両肩を鷲掴みにし、
「おおお、竿頭だ!おめでとう、ペア宿泊券だぞ!」
と宣った。
ペア宿泊券?
「マジで?」
訳が分からず素で問い掛ける俺に、
「マジだよ、マジ!今日は各船の竿頭にペア宿泊券をプレゼントする企画こっそりやってんだよ!」

「アオリだけで勝負のつもりだったんだけど2杯2人だから外道の数で決まりだな!」
なんだ、それ?
そんな告知どこにもなかったぞ?
そもそもペアで何処に泊まれる宿泊券なんだ?
なんでですか?
どうしてですか?

多数の“?”が頭を渦巻き、狐につままれたような気分(って表現も古いな・・・)で帰港までの時間を過ごした。

船を降りる際、追い撃ちをかけるように、
「誰が頭か伝えてあるから、忘れずに宿泊券持ってってよ!」とキャプテン。

そして宿に戻ると社長から本当に宿泊券を手渡された。
見ると、“日本釣り船団体協議会”発行の提携旅館の宿泊券だった。
「いや、ここの関係の人に今朝突然頂いちゃって急遽決めた企画なんですよ。」
とのこと。
そういえばこの日は横浜で国際フィッシングショーをやっていたから、その関係だろうか。
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手作り感満載の宿泊券。ホントに泊まれるのこれで!?

厳しい日なみだったけどこのサプライズ、兎にも角にもこの日もまた忘れられぬ釣行となった。


【釣果】
7時15分出船、15時沖揚がり

【タックル】
ロッド:マニアス・アオリスペシャル350
リール:スピードマスター201
ライン:PE2号、ハリス:フロロ6号

【ヒット・ルアー】
YOZURIマーブル・トマト4号、YAMASHITAネオ・トラッド・グリーン4号
ヤギタ・グリーンライン4号(ヤリイカ)
YOZURIキューセン4号、YAMASHITAキューセン4号(マルイカ)

【本日の総括】
我が沖釣り史上最も寒かったこの日、しかし本命に加えて美味しい外道もバッチリ釣れ、更に宿泊券まで貰っちゃったのだから最高だ。
余りの寒さに何度も釣りを中断しようかと思ったが、船長に導かれるように釣りを続けた結果がコレ。
釣りに対する姿勢と男の生き様って奴を暗に教えて貰ったような気がした。
経験値の上がった一日だったかな?

しかしこの宿泊券騒動には続きがある。
翌朝8時に俺の携帯に野毛屋からの着信があった。
出てみるとそれは社長からで、
「昨日のペア宿泊券ねえ、あれ1人無料の間違いで2人目以降は有料なんだそうです。」
社長は恐縮してたけど、無料で頂いたものだし、そもそもそんなモノが貰えるとも思ってなかった訳で逆に恐縮しちゃったぐらいだ。

エキサイティング&ドラマティック船宿・野毛屋釣船店。
やはり俺にとっては最高の船宿だ。