新たなる伝説の始まり・・・8/21野毛屋

徐々に仕事が忙しくなってきた。
これは良くない兆候である。

休日出勤、出張、ゆっくりと着実に埋まり行く9月の俺の予定表。

・・・。

マズイ!

メンタル・ヘルス・クライシス!

危機感を覚えた俺は緊急休暇を取得すると、金沢八景・野毛屋へと向かったのだった。

水曜日の船長のコメントを見ると、外道でワラサが3本揚がったので、タイラバ客はメタルジグを用意するように、とある。
まさかエビタイの第一忠丸で青物のジギングが出来ようとは・・・。
勇治船長らしくないなと思わないでもなかったけれど、それだけ今夏の真鯛は厳しいということなのかもしれない。

そんな訳でタイラバ・タックルとジギング・タックルの2種類を船に持ち込んだ。

左舷トモに俺、右舷トモにテンヤの客。大型の第一忠丸に客2名の大名釣りだ。半年前のアオリ船だった頃の賑わいを思えばなんとも切ない。

さて、この日は朝から南西のやや強い風が吹いており、波が高め。
しかし朝一のポイント、第三海保~観音崎沖は風裏になる為比較的穏やかだ。

・・・。

まあ、海が穏やかであることと魚が釣れることはあまり相関関係がないようだ。

沈黙する船中。しかし、
“コンコンコンッ!”
「!」
“ゴゴゴゴゴ!”
「船長、なんか喰ったあああああ!」
沈黙を切り裂いたのは俺の変な絶叫だった。
テンヤを手繰り手羽ね竿を船縁に挿すと、ランディングネットを片手に駆け寄るキャプテン勇治は恐らく日本一身軽な60歳だ。

「何メーター?」
「???底から3メーターでしたけど。」
「タナじゃねえよ、魚上がってくるまであと何メーター?」
「じゅ、15メーター程でございます。」(恥)
「引きが鯛じゃねえな。ヒラメかなあ、この辺多いから。」
お、ヒラメいいなあ。もしくはホウボウでもいいなあ。鯛じゃないのは確定的だけど、美味しく食べられるゲストなら何でも歓迎だ。
しかし
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上がってきたのはホシザメ。サイズの割に引きが弱いからサメだなんて思いもしなかった・・・。

勇治船長いわく、食用のサメってことだったけど、とても持ち帰る気がしないっす、コイツ。

潮止まりの時間は大貫まで走って鯛と青物両方狙い!俺はジギングで青物一本勝負に出るが、うねりが酷過ぎて釣りにならねえ!

さらに速い上潮が流れはじめ、「一昨日上潮で釣れた猿島の浅場に行こう!」と直ぐに引き返した船長。なんでも水深僅か12mの浅場で3kgオーバーの体が釣れたのだとか。しかもタイラバで!

先週までとは完全にポイントが異なるようだ。

・・・。

しかし前日釣れたからといって翌日も釣れるとは限らないのが釣りというものなのでゴザイマス。

「一日では攻めきれない程ポイントが多い」という猿島周りのカケアガリをあちこち攻めたのだが外道を含めて魚からのコンタクトは皆無。最後は奥の手とばかり北東に進路をとり、やってきたのは八景沖、“おきのせ”ブイ周り。

「この辺は魚礁があってさあ、網ですくうと凄い量の魚が入るんだよ。」
ほうほう。お土産狙いに切り替えたってことですかな?
「数年前にここで大食いがあってさ、朝から一日ここだけで粘ってその時は6kg超えるカンパチも揚がったぞ!」
あれ?青物を狙ってるのかな?
「仲間のタイラバ船は昨日ここで5kgを釣ったんだ!」
流石、あくまで鯛狙いでしたか!!!

しかし魚は全く反応しない。

・・・。

「ダメだ、今日はもう諦めた!すいませーん、これで揚がって行きます!」

客というよりは自分自身に言い聞かせるように大声で叫んだキャプテン勇治は、沖揚がりまでしゃくり続けた自らのタックルを片付けると、船を港へ向かって走らせたのだった。

【釣果】
7時15分出船、15時15分沖揚がり
ホシザメ1尾

【タックル】
<タイラバ>
ロッド:ZENITH零式 LIGHT G-TOP L 
リール:シマノ カルカッタ・コンクエスト301F
ライン:PE1号、ハリス:フロロ5号
<ジギング>
ロッド:TENRYU OCEANIA OC581B-4
リール:SHIMANO SPEEDMASTER201
ライン:PE2号、リーダー:フロロ8号

【本日の総括】
聞いたところによると、野毛屋のエビタイ船は平成12年以来の歴史的不調なのだそうだ。

しかし幸か不幸か今年タイラバを始めた俺としては、この状況が普通になってしまっている。故に1枚を釣る難しさは身に染み付き、1枚を釣る喜びは過剰になっている。

そりゃあ、金と時間とそれなりの労力を使って金沢八景から船に乗り、休む事なくラバージグを操作しているのだから、釣りたいに決まっている!

でも同時に釣れない事を必要以上に悲観することもなくなった。

なにしろ釣れないから船は空いているし、そんな状況だからこそ、東京湾伝説の男・キャプテン勇治から貴重な話を聞けたりもする。この日も、お陰で印象深い話をいくつか聞くことが出来たが、まあそれは俺の胸の内に仕舞っておこう。

いずれにせよ、どれほどネガティブな状況の中にあっても、良い側面はあるのだ。

しかし苦労の末ようやく本命を釣ったというのにその後再び連敗街道まっしぐら。
新たな敗北伝説の始まりなのだろうか……?