テエガツリテエンダ!…6/28トレード・ウインズ

午前3時55分。早朝というより深夜といった方がしっくりくるような時間に川崎港を出船した船は、1時間半かけて観音崎沖のポイントに到着した。

辺りは深い霧に包まれており、髪や服が湿る。そして霧が晴れたと思ったら、入れ代わるように本格的な雨が降り始めた。「曇り時々晴れ」という天気予報は見事に外れた訳だが、そもそも梅雨時の天気予報は外れやすいものだし、船長含め7人しか乗れないこのボートに2名の前厄男が乗っているという負のシナジー効果を考慮すれば仕方のないことかもしれない。

・・・。

という前フリに全ての答えが詰まっている。

前回、野毛屋のエビタイ船でタイラバに初挑戦して見事に玉砕したDDVセンパイと俺。
そこで我々はリベンジの為タイラバ専門の船に乗ることを決意、元々はチャーター・ボートということで乗船料が大型乗合船を出している船宿の2倍近いが、怒涛の釣果を叩き出している東京湾タイラバのパイオニア、トレード・ウインズさんにお世話になったのだ。

開始して程なく、左舷のトモで鯖が上がった。
前回の野毛屋では外道はサメだけだったので、タイラバ船で見る初めての食用魚。期待は高まる。

しかしこの後2時間程粘ったもののアタリは全くない。
船長は意を決したように「道具上げてキャビンに入って下さい。暫く走りますんで。」

船はフル・スロットルで南下を開始。
「1時間かかると思うけど、洲ノ崎まで行ってみます。」洲ノ崎!?房総半島の先端じゃないか!湾奥川崎の船が房総半島の先端まで走るなんて、東京湾を完全縦断ってことだ!スゲエ!
操船しながら船長はポツポツ語る。
「洲ノ崎はコマセ禁止で荒れてないから魚種が多いんですよ。本命だけじゃなく外道も色々釣れると思いますよ。」
「ハタだって釣れるからねえ。あの魚は繁殖力が弱いから、ハタが住めるってことは海が荒れてない証拠なんですよ。」
「しかも先週は洲ノ崎のエビタイ船でラバージグの客が9.5キロの真鯛を上げたらしいですよ。」
9.5kg!!!
そして極めつけは満面の笑顔で
「洲ノ崎にはロマンがあるよね。」

・・・。

熱い!池田船長熱いっす!
俺,感動したっす!ついて行くっす!!!

1時間たっぷり走って洲ノ崎沖に到着、減速し魚探で反応を探っていた船長はおもむろに船を止めると、「この辺から始めますか!」と水深50m程のポイントをチョイス。潮が濁っていた観音崎付近と異なり、潮は綺麗に澄んでいる。漁船の数も少なく、なんか釣れそうな気配が!

・・・。

1時間経過。

・・・・・・。

2時間経過。

・・・。

しかし予想に反し本命はおろか、外道すら当たらない。

・・・。

「底から6m付近に鰯の反応が出てるんで、15mくらいリトリーブしてみて下さい。」
といった具合に船長もちょくちょくアドバイスをくれるのだが、魚からのコンタクトは一切ない。

右舷ミヨシでメバルが、左舷胴の間でカサゴが上がった時点で沖揚がり時間を過ぎてしまった。

「じゃあ最後にもう一流しして帰ります。」
船長も諦め気味だ。

“コンコンッ!”
「?」
突如俺の竿に振動が伝わった!
“コンコンコンコンッ!”
おお、アタリだ!遂に真鯛か!
“ゴンッ!”
ノッタアアアアア!
「アレ?」
途中から全く無抵抗で上がってくる魚、来たるべき激しいファイトに備えて身構えた俺は完全に肩透かしを喰った恰好だ。

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上がってきたのはカサゴ。そしてこのカサゴが沖揚がりの合図となった。
最後の流しでお土産は釣れてそれなりにドラマティックではあったけど、本命は船中ゼロ。
厳しい結果に終わった。

「帰り2時間以上かかるんで、寝たい方は奥にどうぞ。」と船長。
するとDDVが特等席へGO!
俺は船長の真横に陣取り、色々と話しを伺うことができた。

印象深かったエピソードを幾つか。

かつて初めての釣りから実に7回連続ボウズだった客がいたが、8回目に4枚釣り上げ竿頭に。その後コンスタントに釣り上げるようになり、名人と呼ばれるようになった。

一方初めてのタイラバでいきなり釣っちゃう客も少なからずいる。しかしそれらの客がその後の乗船でもコンスタント釣り続けることは絶対になく、必ずスランプに陥る。

一番大事なのは“諦めないこと”。

なんか精神論みたいな部分も多いけど、百戦練磨の池田船長の口から語られると妙に説得力がある。

やはりアタリが極端に少ない釣りだから、ある程度数をこなさないと本質が見えて来ない釣りなんだろうな。


川崎港へ向け操船しながら他船の船長と携帯で話していた池田船長、電話を切ると信じられない言葉を口にした。
「朝やったポイントで真鯛がバタバタっと上がったらしいんだけど、どうせ帰り道だしちょっとやってみませんか?」

「!!!」

船長、熱い、熱過ぎるっす!
今俺は猛烈に感動しているっすううううう!

一度沖揚がりを宣言したにも関わらず、しかも沖揚がりまでも相当に粘ったにも関わらず、更なる延長戦を提案するなんて!

俺は片付けたタックルをもう一度セッティングする為にキャビンの外に出た。

そして朝一で攻めた観音崎沖のポイントに到着すると全員で延長戦開始!
「鯖だ!」
開始早々船長の声が聞こえた。ふと隣をみるとDDVの竿がいきなりしなってるじゃないか!
フォーリング中のラバージグに鯖が食いついたようだ。みると反対の左舷でも鯖がかかっている!取り込み直前にDDVはバラシてしまったが、次にラバージグを投入したらまた鯖がかかった!

“コンコンッ!”
「?」
底から3m程巻いたところで俺の竿が叩かれた。
“コンコンッ!”
・・・。
キタアアアアアア~~~~~~~!
苦節40年、いよいよ本命のアタリが俺の竿に!?
“コンコンッ!”
“コンコンコンコンッ!!”

アタリがあってもアワセずに同じペースで巻き続けろと言われたものの、いつまで巻けばフッキングするのか?

“コンコンッ!”

もう10mも巻いているというのに、一向にフッキングしないので不安になってきた。

ん?

隣を見ると、DDVが掛けた鯖が縦横無尽に走り回っており、全く寄せられない様子。

・・・もしかしてコレってオマツリか!

がっかりしてラバージグを回収すると、あれ?“オマツリなんてしてねえし、ジグのネクタイは魚が噛んだような跡がある!”

早まったあああ!
俺は何てことをしてしまったんだ!本命だかシーバスかはわからないけど、間違いなく魚が俺のラバージグにロックオンしていたのだ!

釣りにバラシはつきもの、魚のアタリをフッキング出来ない事だって日常茶飯事だ。でもこの釣りではアタリそのものが非常に貴重な訳で、それを自らフイにしてしまうなんて・・・。


【釣果】
3時55分出船、15時半帰港
カサゴ1匹

【タックル】
ロッド:ZENITH零式 LIGHT G-TOP L 
リール:シマノ カルカッタ・コンクエスト301F
ライン:PE1号、ハリス:フロロ5号


【本日の総括】
「エビでタイを釣る」なんて言葉があるくらい日本人にとって特別な魚“真鯛”は沖釣り師にとっても特別なターゲットだ。
なにしろコマセを撒きまくる釣りだってそんなに簡単に釣れる魚ではない。そんな難しいターゲットをルアーで狙うなんて、そりゃー大変な釣りだ。

2戦連続本命は釣れず、いや2戦連続本命は船中型を見ず。

でも本命はすぐに手が届きそうなところまで迫っているような印象だ。

次こそ釣り上げる!
絶対に釣る!

しかし出船から帰港まで実に11時間半。船長がこれだけ手を尽くしてくれたのなら、本命は上がらずとも諦めがつくってもんだし、むしろ船長の心意気に応えることができなかった罪悪感すら感じてしまう。
池田船長、お疲れ様でした。
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カサゴの刺身で晩酌。トゲと骨が多くて捌くのが大変な上に、唐揚げか煮付けの方が旨い魚だという事が分かった。