思い付いたら即行動

普段余り縁のない溜池山王で仕事を終えたこの日、地元をかすめていながらこれまた余り縁のない南北線で直帰。

しかし、まだ時間も早く、真っ直ぐ帰るのが勿体ない気分だ。

そんな訳で軽く寄ってみたのが新丸子と武蔵小杉の間にあるもつ焼き店「けんもつ屋」。以前ネットで偶然見つけて以来気になっていた店だ。

一時期このすぐ近くのスタジオで「KAWASAKI DISTORTION」という名のSOCIAL DISTORTIONのコピー・バンドを仲間とやって遊んだり、俺が生まれたのは元住吉の某病院だったりもして、生活圏ではないけど何かと縁のある川崎市中原区

入口の扉が曇りガラスで中の様子が全く窺い知れなかったのだが、思い切って入ってみれば客は4人。満員で入れない事が多いとのネットの記述もあったので覚悟はしていたものの、拍子抜けする程あっさり着席、まずは瓶ビールと煮込みを頼む。

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程なく出て来たのはボリューム満点の煮込み。様々な部位が一緒くたに煮込まれており、根菜類や豆腐こんにゃくなどの具は一切なく“モツ・味噌・ネギ”だけで勝負する男らしい一品だ。これに卓上の一味を大量にふりかけて食べる。旨い!

ビールがなくなりホッピーをオーダー、そして焼き物に行く前にレバ刺し貰うのが俺の常なのだが、この日はどうにも気になっていた刺身三品盛りを注文。ピン飲みで盛り合わせもなかろうとは思うのだが、メニューを見る限りでは肉のクオリティに相当の自信があるようだったので、旨い生肉に目がない俺としては色々試したくなってしまったのだ。

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タン、ガツ、ハラミの三品、目当てのレバ刺しが入っていなくて肩透かしを喰らった気分だが・・・
うまい!全てうまい!それも最高にうまあああい!!!

タン刺は極限まで柔らかく、ガツはコリコリとした歯ごたえなのにあっさり噛み切れる二律背反、そして正肉と見紛うほどに綺麗なサシの入ったハラミ、これにおろし生姜orおろしニンニクを軽く乗せ、醤油で食べるというシンプル極まりないメニューなのだが、これが滅法旨い!しかもボリューム満点で価格は僅か980円!いや~、恐ろしいコスト・パフォーマンスだ!

生肉で腹一杯という恐ろしい事態に陥り残念ながらレバ刺しはパス。しかし1本僅か70円の串ものはどうしても食べてみたい!オーダーは2本からとメニューには書いてあったのだが食べ切れる自信のなかった俺は「1本だけじゃダメですか?」と恐る恐る尋ねてみた。すると「ああ、いいっすよ!」と快諾してくれた店員。この瞬間好感度アップ!
シロをもらいたかったのだが生憎切れていたようなのでレバーを塩でもらう。
実は俺はレバ刺しは大好きなのに焼いたレバーはあまり好きではない。しかし赤羽・米山、野方・秋元屋、東十条・埼玉屋など、限られた店、すなわち本当に旨い店のレバーだったら美味しくいただけちゃう、ある意味俺にとってその店の本質を見極めるバロメータの役割を果たす食材だったりするのだ!

果たしてその味は・・・

文句なしにウマアアアアアイ!

会計はしめて2800円也。刺し盛りをパスして焼き物を中心に攻めれば、2000円で十二分に満喫できる!
また1軒好きな店が出来てしまった・・・。


ところで住宅街のもつ焼き屋とくれば、偏屈な親父が仏頂面で厨房に立ち、カウンターは仕事を引退したような常連のオッサンが埋め尽くすという図式が基本だが、この店の料理担当は若者、そして常連客も同世代の若者が多くて若々しい活気に溢れていた。
しかもこの店員、好ましいことに若者にありがちな傲慢さや不遜とは無縁。ぼんやりホッピー飲んでた俺に「残り物ですいませんが良かったらどうぞ。」と他の客がオーダーしたハラミ焼きを突如おすそ分けしてくれた。礼を言いつつも訝しげな俺に、「いやあ、刺し盛りお出しするまでもう少々お時間かかりそうなんで、良かったらこれつまんでて下さい。」と爽やかに言い放ったのだ!
刺身を予め仕込むのではなくオーダーを受けてから切り分ける姿勢にも感動したけど、このホスピタリティーにはもっと感動!なんていい店なんだ!

更に俺を喜ばせたのは店内を埋め尽くす鉄道関連グッズ!引退して久しいとは言え、幼少の頃は鉄道が大好きだった俺。
無垢な少年時代の象徴とも言える鉄道と、汚れちまった大人を象徴するかのようなもつ焼きとのアンビバレントな邂逅に、俺の涙腺は緩むしかなかったのだった・・・。