華麗なる劇場型激情モツ焼店

モツ焼店の最高峰とも言える東十条・埼玉屋。

メディアでもしばしば取り上げられるこの名店中の名店は最近ますますハードルが上がっているようで、前回訪問時は会社を早退して6時半に訪店したというのに、なんと仕込んだ食材が全てなくなってしまったとのことで既に暖簾が仕舞われていた。
行列覚悟で遠路遥々やって来たというのに、店に入ることすら叶わなかったのだ!

さて大宮で昼間に仕事が入っていたこの日、大宮在住のタイラバマン・DDVセンパイを誘って埼玉屋へリベンジに出掛けることに。万端の準備を整え(要は仕事をサボって)5時40分に埼玉屋へ到着!

しかし流石は人気店、この時点で早7人待ちだ!しかし、待てば食べられるのだからまだラッキーと言えましょう。

30分程待ってようやく店内へ。恐面お姉さんに生ビールをオーダーすると、「ベリー・レアでいいだろ?」といきなりマスターが話し掛けてきた。お!着席と同時に焼き物が頂けるとは!勿論異論などあるはずもない。すると間髪入れずに焼くというより軽く焙っただけの牛串がタレで出て来た。いや~、これが滅法旨い!

あっという間にビールがなくなったので、日本一旨い名物レモンハイをオーダー(客の7割はこれを飲んでいた)。ついでになかなか頼むタイミングが難しい煮込みも貰う。

ここの煮込みは他とは一味違い、モツではなく牛バラ肉を使っているのだが・・・
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箸で簡単に切れる程柔らかく煮込まれた肉、奥の奥まで染みた味・・・。酒との相性も抜群でこれがとんでもなく旨い!ううう、マジで酒が止まらない!

ところで冒頭にこの店はハードルが高いと書いたが、それは混んでて入りにくいという理由だけではない。
まず、原則的に串焼きのメニューは部位も味付けも一切選ぶことができない。マスターが出す順番でマスターの決めた味付けで提供されたものを黙々と食すのみである。従って好き嫌いがあったり、“このネタはタレじゃなきゃ嫌だ”といったこだわりがあると、楽しむことができない。

次に“酒を飲めないと入れない”ということ。
以前、「今日車で来てるんで酒飲めないけどいいですか?」と入って来た客を、「悪い、じゃあまた来てよ!」とあっさり追い返した場面を目撃したことがある。
逆にこの日は暖簾を下げた後に入って来た客が「レモンハイ1杯だけでも飲ませて!」と食い下がるのを、出す食べ物が何も無いから駄目だとにべもなく断っていた。
確かに普段のマスターの言葉の端々から“最高に旨い食い物と旨い酒を提供する店”なんだという気概とか誇りのようなものをひしひしと感じる。どちらか一方が欠けても駄目なんだろう。

チレの塩焼きにガーリックバターを乗せたり、鶏肉にはサルサソースをかけるという独創的アイデア。レモンハイは氷を使わず、焼酎自体をシャーベット状に凍らせ、そこに瓶のレモンサワーを一瓶注ぎ、更にレモンカットを3個搾り、仕上げにソルティードックよろしく飲み口に塩をまぶすという手間隙のかけよう。更におかわりを頼むとグラスに残ったレモンカットは全て捨て、一から作り直す徹底ぶり!
確かに食事にも飲み物にも一切の妥協はない!

そして極めつけのハードルは、やはりこの店の接客だろう。
常連と一見の分け隔てなくガンガン話し掛けてくるマスターと店員の兄ちゃん。馴れ馴れしくもあり
、時に乱暴な言葉が出たりもする。
駄目な人は絶対に駄目なんだろうなあ・・・。
でもマスターも兄ちゃんも常に笑顔を絶やさない。彼等は純粋に客に美味しい食事と酒を提供し、楽しんでもらいたいという思いが非常に強いのだと思う。
そういう意味では業種は全く異なるものの、金沢八景の釣船店、野毛屋と相通じるものを感じないでもない。

思うに、店員の「態度が悪い」と「失礼」は同義語ではない。要はホスピタリティーの問題なのだ。

埼玉屋も野毛屋も接客態度が悪いと感じる人は少なからずいるかもしれない。でもどちらも“客に満足してもらいたい”というホスピタリティーを第一に考えている最高な店なのだ!

串ものを一通り食べる事が出来た幸運な我々は(なにしろ開店と同時に来なければ人気部位は売り切れてしまうのが常なのだ)、大満足で会計を済ませると、近隣の居酒屋で軽く二次会。勿論釣り談議に花を咲かせたのだった・・・。