原点回帰

最早国民食とも言えるラーメン、でも俺が高校生だった25年前にはラーメン専門店などそう多くなかった。

近所の中華料理屋で供されるラーメンか、即席のラーメン・特に“中華三昧”が最高に美味だと思っていた15歳の俺が、入学したばかりの高校の帰り道にクラスメイトに誘われて初めて体験した新宿の「桂花ラーメン」は衝撃的だった。

見たこともない白濁したスープ、嗅いだことの無い強烈なトンコツ臭、体験したことの無い太くて固い麺、「なんだ、このゲテモノは!?」と圧倒された俺は完食すらできなかったように記憶している。

でも店の注意書きには“少なくとも三度はお召し上がり下さい。きっとあなたは桂花ラーメンがやみつきになるでしょう”みたいな事が書いてあってので、新宿が通学路だったこともあってものは試しと三回食べてみることにした。(当時は比較的素直だったのだ。)

そして三度目の訪問時に思い切って“一番人気”と書いてあった太肉麺(ターローメン・当時730円か780円だったと記憶している。15の俺にとっては結構な値段だったのだ。)を食べた時、初めて食べた時と正反対の衝撃、即ち「なんだ、この旨さは!!!」と激しく打ちのめされたのだった。
濃厚なスープに負けないしっかりとした麺、そしてチャーシューとは全く異なる軟らかくて味わい深いターロー、しっかり味の染みた煮卵、そしてそれらの公倍数的トゥー・マッチな組合せを中和するようなキャベツ。こんな旨い食い物がこの世にあったのか!

以降、高校・大学と桂花ラーメンは俺のソウル・フードであり続けた。

そして年を追うごとに桂花の人気も徐々に高まり店の数も増えてきたのだったが、人気が高まるにつれ供されるラーメンのクオリティが一定しないという困った現象が起こるようになってきたのも事実。

それからというもの、俺は何度も失望することとなる。

時には濃厚さがウリのはずのスープが信じられないくらいに薄く、時に歯ごたえがウリのはずの麺が饂飩の様にグニャグニャで、時に柔らかさがウリの太肉がパサパサしており、そしてもう通うの止めよう!と思った瞬間に完璧なラーメンが出てくる。

…。

俺にとって桂花ラーメンとは言わば“打率が2割に満たないホームランバッター”のような存在と言えよう。当たれば飛ぶけど空振りも多いのだ。

…。
月日は流れる。

巷に旨いラーメン店が溢れる現在、桂花はかつてのような行列ができるようなラーメン屋ではなくなった。サイド・メニューも乏しく、大盛りすらなかった“上から目線商法”もすっかり影を潜め、今では多様なニーズに対応している点も当時を知る者としては物哀しく感じなくもない。

俺自身も桂花しか知らなかった時代とは異なり、様々な“旨いラーメン”という選択肢を持っている。

それでも、原点回帰というか、時折無性に桂花ラーメンを食べたくなる。
そういえば俺の親父方は熊本、色んな意味で俺のルーツなんですな。

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先日久々に食べた太肉麺、完璧な味で完食しちゃいました。

腐れ縁は続くのだ。