ビター・メモリー・・・4/14開成フォレストスプリングス

俺の四十代は、まるで何かを暗示しているかのようなどんよりとした曇り空と共にやってきた。まあ良い。望むところだ。

仕事のやり繰りをして無理矢理休暇を奪い取ったこの日、俺は自らの不惑を自分が仕留めた獲物で静かに祝うべく、野毛屋のアオリ船に乗ろうと企んでいた。

しかし、昼前から本格的な雨が降り、更に南の風が強まるとの最悪の天気予報、加えて前日は船中1杯という今シーズン最悪の釣果を記録した野毛屋のアオリ船。
これだけ悪条件が揃えば、休船のリスクが高すぎるじゃないか!
わざわざ休みを取ってまで実行したバースデー釣行が「休船で釣りが出来ませんでした」じゃ目もあてられない!

という訳で俺が下した結論は、釣行を取りやめ会社へ行くことだった・・・。

…。


というのは真っ赤な嘘で、昔々“ホーム”と呼んでいた時代に、まさかのボウズを喰らって家なき子への転落を余儀なくされたという憎き開成フォレストスプリングスへと運試し釣行へ向かったのだった。

曇天の平日、更に雨が強まる予報まで出ていれば混んでいようはずもない。俺が到着した6時50分時点で先行者は僅かに4人。ポイントも選び放題なわけです。

どちらかと言えば3号池が俺のメイン・フィールドだが、この日は1号池の最奥から攻めてみることに。

・・・。

勿論釣れない。釣れようはずもない。
ある意味期待を裏切らない渋さ。ここは1尾の魚を釣る喜びを知る場であると同時に、諦念と忍耐を学ぶ場所でもあるのだ。

・・・。

・・・・・・。


って渋いにも程があるだろう!

時間の経過とともに客の数も徐々に増えてはきたのだが、フライマン1名を除いて皆大苦戦。

更に海釣りにうつつを抜かしている内に、これ以上下がりようがないようなレベルだった俺のエリア・フィッシングのスキルは確実に低下、数少ないアタリをなんとかフッキングに持ち込んでも、取り込む前に何故かバラシてしまうのだ。

見かねたスタッフが早々に放流のプレゼント。俺の釣座は放流ポイントから最も離れていたのだが、今日の1尾目が、いや、40代の1尾目が放流魚でいいのか?否!
・・・という痩せ我慢的ダンディズムを貫き、同じポイントで粘ることにした今日から不惑の俺。もう惑わないんだから!
しかし沈黙を続ける俺の竿を尻目に次々と魚をヒットさせている放流ポイントのアングラー。俺はあっさりと人生の方向転換、小走り気味に放流ポイントへと急いだ。
オリエン4gの赤金を装着、俺は完全に放流魚狙いに切り替えた。信念がないのでは決してない。発想が柔軟なのだ!
しかし!ここからまさかの三連続バラシ!何故だ!?
更に神は試練を与え給ふ。まだ1尾も釣っていないというのに、予報では午後からだって言ってたはずのに、突如大粒の豪雨が湖面を激しく叩きはじめた午前9時。
俺はやむなくタックルを地面に置き、レインウエアを取りに車へと戻る。もうこのまま帰ってしまいたい気がしないでもないが、タックルが1号池に置きっぱなしなのだ。
レインウエアを着込み、気分萎え萎えでポイントへ戻った俺を襲う更なる悲劇。
大粒の雨が跳ね上げた泥が竿とリールにベットリと付着しているじゃないか!
しかも砂粒がリール内部に侵入してしまったようで、滑らかな回転フィールを誇っていた俺のツイン・パワーのハンドルが、“ガリガリ”っという不快な違和感を伴っている!

『ガビーン・・・』(死語)

正にこの死語こそがその時の俺の心境を表すに最も相応しい言葉だった。

ツイン・パワーがポンコツ化した最大の弊害は、巻き心地の悪化以上に“アタリがわからない”ということだった。カーボン製のSULロッドを愛用していた際にはアタリはライン変化でとり、早いアワセで積極的に掛けにいく釣り方だったのだが、このテーパー&シェイプのグラスロッドを使ってからというもの、リールで感じたアタリを乗せる釣りへとスタイルが変わったのだ。ハッキリ言ってこれは致命的だ!

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やっと釣れたというのに、もはや喜びも感じない。

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雨は強くなったり弱くなったりを繰り返しながらも、止む気配は全くない。むしろ通勤電車内で不意に襲われた下痢の便意のように、発作の間隔は徐々に短くなり、激しさは徐々に増している感じだ。

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放流効果は瞬時して消え去り、いつもの渋さが戻ってきた。

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最後までパターンは掴めなかった。
いや、そもそもパターンなど無かったのかもしれない。


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大雨、リールの不具合、そして釣れないとくれば、テンションなど上がるはずもない。

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昼食休憩の後は、更に渋さが増した。
2g~4gのスプーンを使い分け、あらゆるレンジを攻めても釣れない。


クランク、ミノーとプラグ類も一通り試すも釣れない。

最終兵器・ペレスプを投入するも釣れない。

ペレスプでカラーローテーションを施すも釣れない。

もはや俺に残された手は無かった。

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スティックを除いて他には・・・。


【釣果】
7:00~15:00
9尾(ニジマス6、ブルック3)

【タックル】
ロッド:TAPER&SHAPE GAAS-66XULT
リール:TWINPOWER 1000PGS
ライン:GT-R トラウト・ゴールド3.5lb

【ヒット・ルアー】
オリエン4g(RG)、NOA2.6(サンスイオリカラ)、鱒玄人2.0(満月ホタル)、ドーナ2.0(消人肌)、アレ

【本日の総括】
初志貫徹の真逆、妥協と打算に満ち溢れた釣行となってしまった。自らを祝福するメモリアル・イベントのはずが、なんともみすぼらしいものに・・・。
まあこれも一つの生きる道、人生は険しい。

帰宅後に緊急メンテナンスを施したところ、俺のツインパワーはほぼ元の状態へと蘇って一安心。すぐにでもリベンジ出来る体勢は整ったのだが・・・。