帽子いっぱいの空虚

イメージ 1

東京で生まれ育った身には、冬の天気といえば“乾燥した晴天”というイメージだが、たまには今日のように空一面が低い雲に覆われる日もある。

そんな完璧な曇り空の寒々しい朝にフィットする音楽と言えば、やはりTHE SMITHSしかない。

不惑間近な中間管理職がこんなルサンチマンの固まりみたいな音楽を愛聴するなんて決して褒められる行為ではないような気もするし、実際30を過ぎた頃から「スミスが好き」という時には若干の気恥ずかしさと後ろめたさみたいな感情が伴うようになっていたのだが、最近では『仕方ねえだろ、好きなんだから』的に開き直ってきた。(やっぱ好きやねん、って感じか?)

そのスミス、昨年末唐突に未発表曲とシングルのB面曲まで網羅した二枚組のベスト・アルバムをリリースした。
シングルを大事にしていた彼等は、シングル曲そのものをアルバムに収録しなかったりするので、ベスト盤をオリジナル・アルバムを聴く感覚で楽しめたりもするし、恥ずかしながら未発表曲以外にも知らなかった曲も収録されていたりで、聴いていて非常に楽しい!

女々しいというか、しょっぱいというか、理不尽というか、本当にネガティブなテーマばかりで埋め尽くされているけれど、言葉の選び方は本当に綺麗で秀逸だ。「WILLIAM,IT WAS REALLY NOTHING」の冒頭の歌詞なんて韻の踏み方も綺麗だし、情景も目に浮かぶ。そのままとんでもない悪意に満ちた歌詞へとなだれこんで行く展開も含めて感嘆してしまう。「STILL ILL」の恐ろしい歌詞、「PANIC」の無茶苦茶な理不尽さと子供に歌わせる卑怯な手口、「THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT」の女々しくもはっとするような美しさ、本当に最高だ。

そしてスミスの歌を実に久し振りにじっくり聴いていると、何やら素っ頓狂な考えに至った。
それは俺が会社の仲間と結成しているバンド、我らがMoritaheadの楽曲のテーマがスミスの楽曲と(クオリティの違いは度外視するとして)非常に似ている部分が多いということだ!我々が作る楽曲も、個人的な怒り、理不尽な暴力、妄想、形而上的殺人等々で満ちている。

極個人的な怒りが普遍性を帯びるときに名作は生まれるというのは持論だが、我々にはその普遍性の部分が圧倒的に不足しているんだなと思った。

とスミスを聴きながらボンヤリ考えたことを携帯電話に打ち込んでいたら会社の最寄り駅に着いた。

さ、今日も仕事だ!


…。という具合に最近の俺は通勤電車で文章を書くことが多いのだ。