異種格闘技船

12月5日、6日と大阪出張が入った。
今回は日程的にタイトだったのと、6日の夕方に東京で仕事があったので観光はお預け、代わりと言っては何だが2日で4軒のタコ焼き屋(勿論ビールが店内で飲める店に限って)を巡った。今回の出色は茶屋町のTAKEという店。濃厚なダシの味とメリハリの効いた味付け、外がかりっと、中がとろっとしたギャップ。丁寧に球状に焼き上げた細やかな仕事。そしてビールとの相性。
非の打ち所がありません。


さて、6日帰京してから1本仕事をこなし、スタッフと軽く飲んで帰宅。翌7日は5時に起床。そそくさと準備を終えて5時40分頃玄関を出た。外に出てみれば当然の如く辺りは真っ暗。そして寒い。ユ〇クロのヒ〇トテ〇クを上下靴下に至るまで着用しているというのに・・・。これ本当に効果あるのかね?

第三京浜、横浜新道、横浜横須賀道路と爆走し、終点の佐原インターで降りて久里浜方面へ。今日の目的地は管理釣り場ではなく船宿、山下丸だ!
釣り歴40年。ハマサキデンスケを地で行く男、弊社が誇るチョイワル・オヤジ、H氏(61)と、適当さにおいては右に出る者がいないと言われる同じ部署のメチャワル・オヤジ、I氏(57)と俺(39)の三人というなんとも奇妙な組み合わせでカワハギを釣りにきたのだ!

船釣りは生まれて初めての俺。シンカー以外の全てのタックルはチョイワルH氏からの借り物だ。考えてみたらベイト・タックルを使うことすらも生まれて初めてだ。出船前にタックルのセッティング、ベイト・リールの使い方、餌の付け方等々一通りのレクチャーを受ける。わかったようなわからないような感じだが、あとは実践あるのみだ!そしてプラシーボ効果も期待しつつ酔い止めを1錠頂く。初めての船釣りで何が不安ってそりゃー釣果より船酔いな訳です。そして我々を乗せた船は午前8時に出船。

暫く川を下るとすぐに海に出る。するといきなり船も停止。ええ?こんな岸壁がポイントなの?と思いきや、釣り客達は一斉にバケツに海水を汲み始める。チョイワル氏に促されるまま俺も訳の分からないままに海水を汲み上げる。汲んだ海水で餌のアサリむき身を洗ってヌメリをとるのだとチョイワルは言う。素直に従いアサリを洗っていると船は急加速、沖へ向かって疾走した。

海に出てみれば強風とウネリ。船は大きく揺れ、容赦の無い水しぶきが俺の全身を濡らす。「結構荒
れてるなあ。」と呟くチョイワルH氏。
「・・・。」
一旦船に乗ったら最後、沖あがりの15時までは帰れない。この瞬間俺は、出船直前に食べたサンドイッチが撒き餌になってしまうであろうことを覚悟した。
30分ほど走ったところで船は止まった。そして船長の合図と同時に釣り客達は一斉に竿を出す。俺はまだ生きている内に証拠写真を、ということで・・・。

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遠くに富士山を望む絶好のロケーション。見晴らし最高で気分も良い。

さて、いざ始めてみると、やはりトラウトとは全く勝手が異なりよくわからない。シンカーが着底したことがわからずリールのクラッチを切りっぱなしにしていたら、大量に放出された糸フケが俺の右隣に釣座を構えるメチャワルI氏の更に右のアングラーとオマツリしてしまう大失態をいきなり演じてしまった!
困惑する俺を尻目にポンポンとカワハギを釣り上げて行く左側のチョイワルH氏。
早くも格の違いを見せ付けられる。
仕掛けを沈める際、リールを軽くサミングするとオマツリやバックラッシュの防止になるうえ底もとり易いとのことで早速実践してみると、あ、ホントだ!そして着底後糸フケを取り、タタキと呼ばれるロッド・アクションで中オモリのような集魚板を激しく揺らし魚にアピール。そしてエサのアサリをゆっくり揺らすようにロッドを軽く煽って魚を誘う。
暫くすると、竿先にプルプルっとしたアタリが!一気に巻きアワセを入れて引き揚げる!一応竿はしなっているものの、シンカーの重みなのか、魚の重みなのか全く区別がつかねえ!
しかし引き揚げた仕掛けを見ると、半分ちぎれたアサリが針にくっついているだけで、魚の姿はどこにもない。
「・・・。」
するとチョイワルH氏が「お前なあ、アタリがあったらアワセるんじゃなくて、竿を送り込んで喰わせるんだよ!」
「ええ?アワセちゃいけないの?」
ライン変化やリールに違和感を感じたら全てアワセろ!と言われ続けたトラウト釣りに慣れ親しんだ俺としては、アタリを感知すると身体が自然にアワセてしまうのだ。
暫くするとまたアタリがきた!アワセたくなる気持ちを抑え、必死に待つ。すると生命反応が無くなったので仕掛けを揚げてみると、全てのエサが無くなっていた!『所詮はエサ釣り』とナメていた部分もあったのだが、結構難しいじゃないか!
この後暫くアタリがあってもノセられない、気が付けばエサだけが取られるという悪循環が続いたのだった。

“ブー!”『?』突如クイズ番組で不正解だった解答者にダメを出すようなブザー音が鳴った。訳が分からずボーッとしてたら「ほら、早く巻いて巻いて!」とチョイワルに促される。そうか、あの音はポイント移動の合図だったのか!慌てて巻き上げていたのだが、俺が仕掛けを回収する前に船は勢いよく走り出してしまった!水の抵抗が凄まじく、中々巻き取れない!半泣きになって一心不乱にハンドルを回していたら、隣のチョイワルが「ドラグを締めろ!全然巻けてないぞ!」ええええ、ベイトのドラグってどっちに回せば締まるんだ?まごつく俺を見かねたチョイワル氏が手を伸ばしてドラグを回した。やっとの思いで仕掛けをを回収すると、針になんか掛かってる!「なんだトラギスが掛かってるじゃないか。」とチョイワル氏。このトラギスとベラがカワハギ釣りにおける外道の代表らしい。
しかし船中の注目を集めてしまったようで、非常に恥ずかしい。船を降りちゃいたい気分だけど、ここは東京湾沖・・・。

唐突に船は停まり、“ブッブッ!”と短く二度ブザーが鳴った。これが釣り開始の合図のようで、一斉に釣り客達は竿を下ろす。俺は締めたドラグを再調整し、悪戦苦闘しながら餌をつけ、一人遅れて釣り再開。オモリを着底させた後、周りのアングラーの動作を見様見真似で倣う。タタキを入れてオモリを底から若干持ち上げて待っていると、竿先がプルプルするようなアタリがあった!「竿を送れ」というチョイワル氏のアドバイスを思い出すも、アタリが出ている時に竿を送るなんてトラウトのセオリーからしたら考えられず、そのままじっと待つ。するとプルプルしたアタリは明確な魚の引きに変わった!一気にリールを巻き上げるも、水深40メートル程の深さがあり、中々姿が見えない。「外道じゃありませんように、外道じゃありませんように・・・」祈るような気持ちで巻き続けていると、カワハギが海面に姿を現した!「おお、やったじゃないか!」とチョイワル氏。やべえ、すげえ嬉しい!クールに受け流すつもりが満面の笑顔でチョイワル氏に応じる俺。世代と役職を超えた連帯感がここに生まれたのだった。
「じゃあ今日の目標は5枚だな。」と一方的にチョイワル氏に目標設定されてしまった。


そして・・・。


【釣果】
8時出船、15時沖あがり
カワハギ5枚

【タックル】
借り物

【本日の総括】
チョイワル氏の目標通りに最終的には5枚の釣果。一方チョイワル氏15枚、メチャワル氏9枚と、キャリア通りの結果が出た。これはこれでフェアな結末と言えるだろう。
しかも釣り自体が、ルアー・フィッシングのように魚を誘うテクニック、繊細なアタリを感知する能力、フッキングに持ち込む技術など、様々なスキルが求められ、はっきり言って“船の上から糸垂らして漫然と待つだけの釣りだろう”などと思っていた己の無知を恥じた。
船上では船酔いする暇も無いほどに忙しく身体を動かし続けなければならず、繊細なアタリを見逃さないよう集中力だって維持する必要がある。
小さな魚なのでビッグ・トラウトを掛けた時のようなファイトの面白味は無いけど、掛けるまでのプロセスにはトラウトには無い面白さがあるのも事実。

そして圧巻は帰宅してから捌いたカワハギのとんでもない旨さだ!三枚に下ろして肝醤油で食べたのだが、これが淡泊だが歯ごたえのある河豚のような白身と、パンパンに膨らんだ肝の相性抜群でビールと焼酎が進む進む!
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パンパンの肝醤油と刺身。美味しくいただきました。

チョイワルH氏は甘辛い味付けの煮物と肝合えに、メチャワル氏はみりん干しとカワハギ鍋にそれぞれしたそうだが、どちらもとんでもなく旨かったそうだ。


という訳で真剣にカワハギ釣りをやることに決めた。