WHITE RIVER 2…11/29白河フォレストスプリングス

規則正しく投下される無慈悲な爆弾が確実に街を破壊していった。壊滅的な被害を受けた街をなす術もなく茫然と見つめながら俺は『これが戦争か・・・。』と思った。恐怖でも驚愕でも愕然でもない。経験したことのない、そして想像力の範疇を軽く凌駕したその圧倒的な暴力と破壊を目のあたりにし、ただ静かなアパシーだけがそこにあった。

そして目が覚めた俺は、それが夢であったことを覚った。BREEZY SOUNDを奏でていたはずのfIVEの鼾は、早朝にヒロシマ・モナムールへと劇的な変貌を遂げており、それが俺に戦争の夢をもたらせていたようだ。

高血圧症を患ってからの俺は、寝起きの悪さに定評のあった学生時代からは考えられないほど目覚めが良い。全ての物事に裏表があるのだと仮定すれば、この『目覚めの良さ』は俺が身体を病む代わりに得たプラスの一面であると言えるのかもしれない。早朝から活動することを余儀なくされる“釣り”という遊びを趣味にしている以上、寝起きが悪いでは済まされないのだから。

白河に到着したのは7時20分頃。しかし駐車場は既に多数の車で埋め尽くされており、相当に混雑しているようだ。
入口で一日券を購入し、タックルの準備を済ませると、俺達はめいめい好きな場所へと散った。万遍なくアングラーが散らばっているので4人並んで釣りができる場所を見つけることは難しいし、最早俺達の中に初心者はいないのだから、それが自然な流れというものだ。

みちのく最南端の白河といえども、朝の冷え込みの厳しさは東京の比ではない。
トラウトの活性も極端に低く、俺はスプーンのボトムずる引きで食い気のないマス達に優しくアピールするも、全く釣れない。クランク、ミノーも不発で、早くも手詰まり気味の俺。

プラグ・ケースを見渡すと、BIG FIGHT松本のおばさん直伝のラパラのシャッド・ラップと目が合った。この釣方はいつでもどこでも有効というわけではないが、産卵期の鹿島槍や低活性の開成など、打つ手が無い程に手詰まった時に幾度となく助けられたことのある切り札なのだ。そう、しかも極北の管釣りで有効な手段なら、みちのくの早朝に効く可能性が高いのでは?俺はメーテルの幻影を追う鉄郎のようにBIG FIGHT松本のおばさんに思いを馳せながら、確信に満ちたキャストを繰り返した。

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フッフッフ。ヨミ通りだな・・・。

しかしヨミ通りと思われたこのルアー、実は只の出合い頭だったようでその後が全く続かない。
陽が登るにつれ、気温も上がってきた。すると魚達の活性も上がってきたようで、岸辺を回遊するドナルドソンの姿も確認できるようになってきたのだが・・・。ん?どのドナルドソンも単独では泳いでおらず、ペアかペアになるべくストーキング・チェリーを繰り返す歪んだ性欲剥き出すしのオスと逃げ惑うメスの姿が・・・。こ、これは、紛れも無い産卵行動ぢゃないでしゅか!どうやら恐れていた産卵期に突入してしまったようだ。となるとこいつらがスプーンに対して口を使うとは考えにくい。大物を釣り上げる為だけにここに来たと言っても過言ではない俺としては、非常に困った事態に陥ったと言えよう。
産卵期定番の攻め方、ミノーのトゥイッチング&ジャーキングで縄張り意識が強まっている産卵期ドナルドソンをイライラさせて・・・って、こいつらイチャついてばかりでルアーに見向きもしねえぞ!さてはまだ卵を産んでいないつきあい始めの燃え盛るカップルなのか?しかし他の攻め方も思い付かず、数少ないミノーをローテーションしながらトゥイッチングを繰り返す。と、“グンッ!”突然俺の竿がしなった!「大物キター!」と思ったのも束の間、普通サイズの魚がいとも簡単に寄ってきた。「?」模様がニジマスと違うぞ?と思ったらフィッシュ・イーターの代表格、イワナでした。(しかも激しく身をクネらせやがって、写真撮る前に池に落ちてしまいやがった!)
朝方にニジマス釣ったシャッドもDRなら、今イワナ釣ったミノーもシンキング。ならば狙いは底一本槍じゃ!

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狙ったのか出合い頭か、オリエン4g消イエローでキャッチ。

10時15分頃、レストランの営業開始を告げるアナウンスが流れた。既にメガ空腹だった俺は、皆を誘いメガランチへ。そしてメガバーガー4つとメガビール4つをメガオーダーし、メガバナシに花を咲かせつつメガ食い。伸びない釣果に苛々することがくだらなく思えるような幸せな時間じゃないか!QOLだとかスロー・ライフだとか、人生の質にこだわる考え方が一時話題になっていたけど、そういう究極の目標を手に入れてしまったかのような穏やかな気分が俺を支配する。数が釣れなくても釣りは楽しいし、やはり男のロマンだ。
しかし俗世間から超越し始めたその刹那、巨大放流トラックが場内に現れたのを見るや否や俺は急いで会計を済ませ放流ポイントへと急いだ。スローな生活だけでは満足できないガッツいた下品な釣り師の面が顔をのぞかせてしまったのだ。
オリエン4gの赤金を投げると、魚ではなく、無数の落ち葉が絡み付いてくる。落葉樹に囲まれた晩秋の白河の風下で釣りをするということは、つまりこういうことなのだ。

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逆風と落ち葉の隙間を連続ついてキャッチ。

この場所良いかも!と思ったものの、俺の右隣に陣取ったオヤジの釣りマナーが最悪で気分が悪くなったので、すぐさま1stポンドへ移動した。だって、釣れた魚を陸に引きずり上げて強引にランディングした上に、魚体をわしずかみにしてフックを外すと足で蹴ってポンドへリリースしてんだよ?しかも何も知らないウブな放流魚たちは、ジジイの下劣なルアーに結構騙されちゃってるのよ!こんな野郎が管釣りで遊ぶ資格があるのだろうか?まあ金払って入場している訳だからあるんだろうな。よっぽど注意してやろうかとも思ったけれど、考えてみれば俺がどうこう言う筋合いのものでもない。だったらこんな低民度の人間が視界に入らない場所へ俺が移動すれば済む話ってわけだ。貴様の来世はゴカイか青イソメに決定だ!魚に食われて死んでしまえ!
池を移動すると、そこには淡々と釣りをするリーダーの姿が。丁度隣が空いていたので、並んで釣座を構えた。リーダーが“良く釣れている”というスプーンを見せてもらうと、彩斗2.0の深緑だった。彩斗?俺は底一本に狙いを定めていたというのに、表層がアツイのか?
そこで俺も彩斗、鱒玄人2.0、ドーナ2.0などを駆使して表層を攻めてみたんですよ~。「なあにい~?やっちまったな~!」男は黙って「オリエン」男は黙って「オリエン」。
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俺、マイクロスプーンを毛嫌いする余り、スプーンで表層を攻められない身体になってしまったみたい・・・。結局俺が釣れる魚は中層以下のタナに限られており、いつもながらオリエンに助けられたのだった。

さて、夕まずめに不発だった前日のリベンジを果たしたかったところではあるが、リーダーが夜渋谷で仕事が入ってしまったとのことで終了まで2時間を残した午後3時に全員揃って納竿とした。
結局この日もドナルドソンのような大物は釣り上げることができなかったし、釣果もサッパリだったけど、それなりに楽しい今年最後の遠征だった。お疲れ様、皆の衆!次はスタジオで会おうぞよ!


【釣果】
7:30~14:50
9尾(ニジマス3、イワナ2、ブルック3)

【タックル】
ロッド:TAPER&SHAPE GAAS-66XULT
リール:TWINPOWER 1000PGS
ライン:東レ フロロカーボン 4.0lb

【ヒット・ルアー】
ラパラ・ジョインテッド・シャッド・ラップ、リッジ55S、オリエン4g(RG、消人肌、SH)、NOA2.6(サンスイ・オリカラ)

【本日の総括】
村田師匠が「管釣りには向かない」と誌上で断言していたので 今まで一度も使用したことのなかったフロロカーボン。しかし愛用者がいるってことは何らかのメリットがあるはずだし、ナイロンより比重が重く沈みやすいという特性は冬の釣りに向いているのでは?
という訳で今回初めて使ってみたのだが、そもそもこれが大失敗だった。
まず、ナイロンに比べると非常にハリのあるラインなのだが、ハリがある故にスプールへの馴染みが悪い。そしてようやくスプールに馴染んだかと思えば、今度は強烈な巻きグセがついてしまう。これらが何をもたらせるかといえば、頻発するライン・トラブルだ!
考えてみれば俺がメインで使っているスプーンは2~4g。バベルやアトミックなどの鼻糞ルアーは全てスプーン・ワレットから排除した今、ラインの沈下速度なんて全く気にする必要なかったわけですよ。結束強度がナイロンより強いと言っても最近は4lbのラインばかり使っていたから殆どブレイクなどしないしな。
本日の教訓。「 師匠のお言葉とナスビの花は万に一つの無駄も無い」