序章

11月7日金曜日の夜のことだった。
翌8日は久し振りの完全オフとなる土曜日。やっと釣りに行ける!俺は呑みたい誘惑を断ち切り、会社を出ると釣具店でルアーを補充して真っ直ぐ帰宅。そして軽く夕食を済ませ、翌日に備えラインを巻き変えていた時に身体の異変に気が付いた。

「?」

太股のあたりが妙に痒い。ズボンを脱いで確認すると、まるで蚊に刺されたかのような突起がいくつも出来ている。これは蕁麻疹じゃないか!掻いてはいけないことは判っていても、耐え切れず掻いているうちにそれは両太股、臀部、腰、脇腹、両腕、首と全身へ広がっていったのだった!
その夜は痒さの為に殆ど一睡もできないような状態で釣りは中止。
翌日曜日も断続的に蕁麻疹に襲われ何もできないまま無為に終え、待ち望んだ休日が一転して暗黒の休日になってしまった。。。

月曜日には嵐の余韻は残っていたものの、一応蕁麻疹は完全に引いたので普段通り(とは言っても予定していたストレス解消プランを実行できなかったことで機嫌は相当悪いまま)出社した。しかしその晩というか翌明け方、再び激しい蕁麻疹が俺を襲ったのだった。

そんなわけで翌日は会社を午前半休し病院へ。医者の所見によれば、成人の蕁麻疹の場合食べ物が引き金になるケースは稀で、殆どは疲れ、ストレス、下痢などで内蔵にダメージがあるなどの複合的要因で発生するそうだ。ストレス?俺は楽しみにしていた週末釣行がダメになって余計にストレスが溜まってんだYO!どうしてくれんだYOOOOOOOOHHHH!!!
更に医者は言う。原因が何であれ、蕁麻疹が発生している時は動物性タンパク質は厳禁。青身の魚と卵は言わずもがな、刺身や生肉は絶対に駄目で、どうしても我慢できなければしっかり火の通ったものを少量にしろとのこと。一方食べて良いのは野菜類、米、パン、麺類のみだという。
「せ、せ、せんせえ!ら、ラーメンは?ラーメンはどうなんですか!?」
いわく、卵とチャーシュー抜きなら問題ないとのこと。いくら禁止されようともアルコールの摂取を断つ訳にはいかないので、せめて食べ物は医者の言い付けを守ることにしよう。

というわけで、半休ついでに以前から気になっていた日吉のつけめん屋、「あびすけ」へ早速出向く。会社とは正反対の方向だが、そんなの関係ねえ!
つけめん大盛りをオーダー(勿論オプションは無しだ!)。開店直後だというのに店内は満席、いやがおうでも期待は高まる。
運ばれてきたつけめん、ここも大勝軒を上回る極太麺だ。そして魚介ととんこつのダブル・ダシの濃厚なスープ。しかもご丁寧に大量の魚粉が予め混ざっており、スープを飲むと口の中がザラザラする程だ!やべえ、これって動物性タンパク質を大量摂取しているってことにならないか?
さて、肝心のつけめんの味だが麺もスープも俺好み。でも“ここでなければ味わえない”的なオリジナリティを持つには至っていないように思った。近所にあれば頻繁に利用させてもらうだろうけど、わざわざ電車に乗って行くまでもないかなって感じい~。

そんなわけで会社に着いたのは12時半過ぎ。
遅く来た分、遅くまで仕事頑張るぜ!などという殊勝な考えなど全くなく、むしろ部内で最も早く定時であがる俺。
これには深い理由がある。
休みの都合が合わずにスタジオに入れないでいた我等がバンドMoritahead、休日が駄目なら平日に!ってことでバンド結成以来初となる会社帰りスタジオを決行したのだ!いつもなら5時間はスタジオに入る我々、2時間では全く足りない!個人的には若干消化不良ではあったが、でもみんなの共同作業で爆音を鳴らすということは、非常に楽しい。
練習後軽く飲んで解散となったが、こういうアフター・ファイブ(死語)の使い方も悪くない。

しかし、そんなささやかな楽しみでは本格的なストレス解消にはならない!
どうにも耐えられなかった俺は、金曜日に緊急休暇を取得、西へ向かうロンリー・ハイウェイを爆走したのだった…。

つづく。