アメリカの鱒釣り・・・第ニ章

LONE PINEから60マイル余り北の町、BISHOPでドライバー交替、ここからはまた俺が運転する。車は更に北上を続け、右手にMONO LAKEという大きな湖が見えたら左折の準備だ。そしてヨセミテ国立公園を東西に横断する唯一の道路、TIOGA PASS ROADに入る。最も標高が高い地点は3000mを越える高地を走るこの風光明媚な道路、晩秋から春の間は豪雪の為閉鎖される。3年前の6月末に嫁さんとここに来た際には特に雪が多かった年でまだ除雪が済んでおらず封鎖されており、迂回を余儀なくされたという苦い過去がある。俺にとっては愛憎入り交じる道路といったところだ。しかも迂回と言ってもちょっとやそっとの迂回ではなく、アメリカ的大規模迂回だからとんでもない。その日の午前10時にTIOGA ROADに着いたにもかかわらず、山脈を迂回して公園西側のゲートにたどり着いたのは実に16時過ぎであった。我々の予定は大きく変更を余儀なくされ、無意味な長距離ドライブで我々は消耗し、そしてそれ以降の旅程で我々の間に不穏な空気が漂い始めたのだった…。

閑話休題
TIOGAに入ると程なく、進行左手に湖が現れる。これが今日の最初の目的地、外周2マイル程の比較的小規模な湖“ELLERY LAKE”だ。そもそもこの地を初めて訪れた2002年、正にこの湖でルアー・フィッシングを楽しむ親子を目撃したことが今にして思えば全ての始まりだったのだ。
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この綺麗な湖がELLERY LAKEだ!標高は2800mを超える高地にある。

俺達が到着した時点でこのポイントに先行車1台、釣り人は僅かに2名。なんとも贅沢なシチュエーションじゃないか!
期待と不安を感じながら早速タックルの準備にとりかかる。何ゆえに不安を感じるかと言えば、俺は奥日光湯の湖と芦ノ湖で合計3回のネイティブ経験しかなく(しかもボウズ回避がやっとだった)、DDVに至っては初めての経験。俺達には圧倒的に経験が足りないのだ!しかし!遠路はるばるこんなところまでやって来てボウズで帰るなんて耐えられねえ!

記念すべきアメリカでの第1投目、俺は使い慣れたオリエン4gのPKをチョイス。おおよその水深を探るべくカウントダウンを試みるも、強い風とクリアラインが災いしよくわからない!
横風に負けないよう重めのルアーを、ということで出発前日に会社を抜け出して買ってきたBUX5.1のORをセレクト。これをゆっくり巻いていると…グンッ!リールに重みが伝わり、竿が弧を描いた!キタ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!思わず歓喜の雄叫び、DDVも「おおお!」と声を出す。SANSUIで買った折りたたみ式簡易ランディングネット(極めて使いづらい)で無事にランディング成功!(しかし写真撮影は大失敗!なにしろこの旅の為に携帯を変えたばかりで操作になれてないのだ。)
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予想に反してなんと開始僅か10分で仕留めてしまったよ!ハハハ、俺、すげえ!
しかしこの後全く釣れず。やはり甘くは無い。DDVもアタリはあるが上手くフッキングしないようでお互いの竿は完全に沈黙してしまった。
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ELLERY LAKEでロッドを振るDDV。絶景。

お腹も空いてきた11:30。俺の左側に陣取ったDDVが山本高広の真似をしてる。ん?違う、魚が掛かっているじゃないか!!!インチキ・ネットを持ってDDVに駆け寄る。そして無事にランディング成功だ!やった!

お互いにボウズを回避したことで心に余裕ができた俺は、ヨセミテ国立公園内でのランチを提案。ここから6~70マイルは離れているけれど、ヨセミテを訪れたことの無いDDVに雰囲気だけでも味わってもらいたい!
というわけでタックルを車に押し込んでタイオガ・ロードを西へ走る。メシを食う為に公園入場料20ドルを払い、およそ100Kmの道程を疾走する。これは断じて愚行ではないっ!!!
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途中オルムステッド・ポイントからハーフドームを望む。

結局ヨセミテ・バレーのビレッジに到着したのはおよそ1時間半後の午後1時。ビレッジの駐車場は大混雑でなかなか駐車スペースを見つけることができなかったが、なんとか車を駐めるとレストランへ一直線。DDVはフィッシュ・バーガーを、俺はチーズ・バーガーをそれぞれオーダーし一気に頬張る。そして食事を終えると元来た道を哀愁Uターンしたのだった。トンネル・ビューやグレイシャー・ポイントなど主だったポイントも見ず、本当に短い滞在で非常に心残りではあったが、間近に見るエル・キャピタンのスケール、遠くに見えるハーフ・ドームの異形、若干なりとも氷河が作り上げたこの自然の芸術を体感することができて、良かったと思う。

さて午後の部。ELLERYの若干西側にあるTIOGA LAKEで竿を振ることに。この湖も規模としてはさほど大きくない。ここにも釣り人は数名で、まるで貸切のようだ。こんな風にね…。
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TIOGA LAKEで釣りに興じるDDV先輩。只今苦戦中。

人の殆どいないこの大絶景の中で釣りをする喜び。しかしその喜びの質はメジャー・キーよりもマイナー・キーの方がしっくりくる感じのものだ。最高、確かに最高なのだがそこには巨大な哀愁も含まれている。幸福と巨哀愁。今度こんなタイトルの曲でも書いてみようか…。
ELLERYに比べるとこちらの方が魚が少ないような感じがする。しかし、朝一のヒットルアー、BUX5.1ORを使っていたら…。ズンッ!「キタアアアアアア!」
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TIOGA LAKEのニジマス。小さいが引きは強く、ボディも綺麗だ

しかしこの後アタリもさっぱり。しかも太陽は背後の山陰に隠れて湖面は暗くなってきた。もう時間が無い!俺達は最後にもう一度ELLERY LAKEを攻めることにした。

さて、朝と同じ場所に車をつけてみれば、なんと湖は無人本当の貸切だ!
崖を滑り降りて湖面に立ち、竿を振る。すると、おお、神よ、なんと俺とDDVの竿が同時にしなった!まさかのダブル・ヒットだ!!!
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30センチ・オーバー。このサイズでも引き味は抜群。しかも魚体が本当に綺麗だ!

そしてその後、俺達は本物の夕まずめを体験することになった。
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管釣りタックルでアメリカのネイティブに挑み、管釣り以上に釣る。
この日我々は完全なる勝利を収めたと言っても過言ではないだろう。

釣りを終えた我々はUS395を南下、BISHOPという町でモーテルを見つけ今宵はここに宿泊することにした。
そして町で最も混雑している「WHISKY CREEK」という名のレストランに入りシエラ・ネヴァダで祝杯をあげる。ここでもビーフを食したのだが繊細な味付けで予想外に旨く、ワインとの相性もバッチリ。
俺達は旨い料理に舌鼓を打ちながら、勝利の美酒に酔ったのだった。

つづく。

【釣果】
9:30~11:30頃 ELLERY LAKE
16:00~17:00頃 TIOGA LAKE
17:10~18:00頃 ELLERY LAKE
8尾(ニジマ7、ブラウン1)


【タックル】
ロッド:TAPER&SHAPE GAAS-66XULT
リール:05TWIN POWER 1000PGS
ライン:VARIVASスーパートラウト アドバンス 4lb


【ヒット・ルアー】
BUX5.1(OR、SH)