流れ行く時のなかで・・・荒木屋(蒲田)

その日は荒木屋の裏手、かつて上弦の月という風変わりなラーメン店のあった場所に、煮干しつけ麺宮元の2号店となる「宮郎」がオープンする日であったが、私は迷うことなく荒木屋へ向かった。

しかしあの漢・宮元の2号店であるならば、「宮郎」などという迎合した名前など付けず、「宮狼」とでも表記して欲しかったな。
孤高の存在に迎合は似つかわしくないのである。

さて、この日私にはある予感めいたものがあった。
正確に言うならば最近の傾向を分析して立てた予測が当たったということになる。

イメージ 1


私は早る心をビールで落ち着け、静かに着丼を待っていた。

イメージ 2


ドーン!
遂に念願かなって対面と相成った限定メニュー、冷たい味噌ラーメンである。

カイワレ、ワカメ、きゅうり等、暑い夏にぴったりな爽やかなトッピングが嬉しい。
何しろこの日東京は今年二度目の猛暑日を記録し、朝から暑いことこの上なかったのである。

冷たい味噌仕立てのスープには、一味ではなくたっぷりのラー油が入り辛さを演出している。
ラー油の辛味というのは一味のそれと比べると爽やかで、これもまた「夏にぴったりな」という安っぽい形容をしてしまう。

そして硬めコールした歯切れの良い麺の旨さは、冷たいスープの中でこそ真価を発揮するような気がする。
とにかく尋常でなく麺が旨い。

またこの日のチャーシューは拳骨大の巨大な代物で、二郎の豚マシ並みのパンチ力があった。
当然完食はしたものの、大盛りでもないライスもつけないラーメン一杯の満腹感とは思えない程充実していた。

食事とは勿論生命を維持する為の栄養素を補給することが主たる目的ではあるが、楽しむことを目的とした食事も豊かな生命の為には必要なのだと改めて思った。

時として一杯のラーメンにも哲学が宿る。