フォーマル・・・桂花末広店

仕事納めの日に突如社長秘書が私のデスクにやって来て、業界団体の新年会の招待状を手渡された。

え?
何故俺のところへ?

まぁ仕方ない。
こういう役割も持ち回りなのだろう。

やだなぁ、久し振りにスーツを着なくてはならないのか。

しかし帰宅後に久しく着ていなかったスーツを試着すると、あろうことかパンツのボタンが閉まらない。
やべえ!やはり俺は相当に太ったのだ。

主に冠婚葬祭用に作ったブラックスーツしか私には選択肢がない。

仕事納めの後は直ちにベトナムへと旅立ち、帰国は件の新年会も催される仕事初めの日の前夜、スーツを新調する余裕など全くないのだ。

せめて華やかなネクタイだけでも買おうと、私は新宿の丸井へと向かった。

DCブランド華やかかりし大昔に丸井でよく買い物をしていたが、今のヤクザ稼業に身を落としてからは20年ほど丸井との関わりは皆無、そんな懐かしい丸井に来たからには懐かしい店で食事もしましょう。

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桂花末広店、太肉麺。

懐かしい青春の味と言いたいところだが、倒産して同郷の味千ラーメンに救済された桂花は屋号こそ存続しているが、あの頃の店とはまるで別物なのである。

そこにはあの頃の孤高はなく、迎合の薫りがプンプンと漂う。

「昔は良かった」というような甘い感傷もない。味千が救済していなければ、既にこの店自体が消滅している可能性が大なのである。

青春の残滓ですらない、青春の残滓の模倣を白けた気分で咀嚼して、私は足早に新宿を後にした。