吉村昭の小説「
羆嵐」の元ネタとなったことでも知られる史上最悪のヒグマによる獣害事件、いわゆる「
三毛別羆事件」のドキュメンタリー「慟哭の谷」を数ヶ月前に読了した私は、その現場を訪れてみたかったのだ。
観光オフシーズン、雨、平日。
辺りには当然誰もいない森の中、くまさんと出会ってしまいそうな恐怖感と薄気味悪さ。
木に残された羆の爪痕が生々しい。
1915年におきた
三毛別羆事件から今年で丁度100年の節目。
私が何の気なしに「慟哭の谷」を読んだのも、そしてこの地を訪れたのも、何かに導かれたような気がしなくもない。
私はその空気感を心の奥底に深く刻み込むと、逃げるように早々と退散した。