暗黒の平日釣行…3/7野毛屋

季節の変わり目は天気も仕事も不安定。
 
会議が飛び、アポイントメントも全て飛び、おまけに晴れ予報が出ていた水曜日。
 
俺は発作的に代休を取得すると、金沢八景へ向けて車を飛ばした。
 
予報に反して細かい雨が降っており、フロントガラスを濡らす。
 
そして陽が登ってくるにつれ、辺りが深い霧に覆われていることも分かってきた。
 
まあいい。
 
久し振りの平日釣行である。
 
潮は大潮、船はガラガラ、俺は良型のアオリイカをバンバン乗せ捲って、精神のメンテナンスを行うのだ。
 
「・・・。」
 
アオリ船、先行者8名。土日より混んでるじゃん!
 
まあいい。平日に大勢の客が来ることは船宿にとって好ましいことではないか。
気を取り直して船に向かい、支度をする。すると、
「!!!」
道具箱忘れた!!!
中オモリ、エギ用スナップ、イカシメピック、歯ブラシといったエギング7つ道具の入ったイカ用道具箱をまるまる忘れてしまったのだった。
緊急釣行だったが故に慌てて用意したのがまずかったか・・・。
 
中オモリは船長に借り、エギ用スナップは手持ちのスナップサルカンで代用することにした。
しかし幸先が悪い。
何らかの忘れ物をした日って、往々にして釣果も冴えないのだ、経験的に言って。
 
結局俺の後には誰も来ず、9名の釣り客と1人のカメラマン(なんかの取材らしい)を乗せて7時15分に出船!
 
東京湾は深い霧に包まれており、暴走系船長・キャプテン勇治の操船も流石におとなしめだ。
そして霧が深いが故に、俺自身何処に向かっているのかサッパリ分からないマジカル・ミステリー・ツアー状態である。
 
50分程の疾走の後、船はスローダウンした。
360度視界は真っ白、陸が見えない為何処に着いたのか知る由もないが、とにもかくにもポイントに着いたことは間違いないようだ。
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いつも通りの釣り方・取り込み方の説明のあと指示ダナのアナウンスがあって実釣開始!
 
いい感じの落と潮が流れているのだが、イカのご機嫌は頗る悪い。
全く気配が無いのだ。
 
船で最初の本命の型を見たのは10時過ぎ、しかも潮上の右舷ミヨシで乗るというイレギュラーだった。
何かがおかしい。
 
潮が止まって70mの深場を恐らくは五目狙いで攻めていた11時頃、
“ドスン!”
“なんかキタ---------!”
アオリの引きではないが、外道にしては引きが強い。
「パラソル級のヤリイカかな?」
取り込み補佐に駆け寄ってきた中乗りエストシ君(仮名)に尋ねるも曖昧に首をかしげるだけの中乗りエストシ君(仮名)、しかし
「でっけえマルイカだ!」
イカの姿が見えるや否や声を出した中乗りエストシ君(仮名)であった。
30センチを超えるようなBIG SIZE、しかも外道の中では一番嬉しいイカだ!とりあえず今夜のオカズは確保出来た訳でホッと一息。
 
しかし上げ潮が流れ始めてもイカの機嫌は悪いまま。
とにかく活性が上がらない。
 
悪いことは重なる。
隣りのクソジジイイ、もとい、大便老人、もといもとい、年配の客のマナーが悪く、吸い終わったタバコを海に投げ捨てていて隣りで見ていて非常に気分が悪かったのだが、折からの北風に煽られて、ある時彼が放り投げたタバコが俺の変態帽子を直撃したのだ!
 
「!?」
一瞬何が起こったか分からなかったが、苦笑しながらそのクソジジイ、じゃなかった大便老人、でもなかった年配客が俺の足元に落ちたタバコを再度拾って改めて海に捨てた時、やっと事態を把握して俺は頭に血が上った。
竿を置き、ジジイを睨みつけた時に中乗りエストシ君(仮名)の姿が目に入り、少し冷静になった。
 
いくらそのジジイがクソであっても、自分の親より年上の人生のセンパイに暴言を吐いたり、物理的な制裁を加えてはいけない。俺だって立派な大人の年齢なのだ。
そしてその大便老人だって船宿にとっては大事なお客の1人なのだ。
 
俺は思った。
この大便老人は俺が手を下すまでもなく、間もなく天寿を全うする。
そしてきっとカモメに生まれ変わるだろう。
カモメに生まれ変わり、巣立ちをしたばかりの無垢な大便老人は、心無い釣り人が船から投げ捨てたタバコをエサと間違えて飲み込んでしまう。そしてニコチン毒が全身に回り、地獄の苦しみを味わうのだ。
薄れ行く意識の中で、前世の己の行為がフラッシュバックする。
そして船からタバコを投げ捨てるという行為がいかに愚かな行為であったことか、身をもって学ぶのだ。
 
俺は落ち着きを取り戻した。
もう冷静だった。
 
ここは俺の最も愛する第二忠丸の上である。
楽しくなくてはいけないのだ。
 
しかし気持ちとは裏腹に本命ボウズのまま沖揚がりの時刻を迎えた。
この時点では船中4人、四隅の4人しか本命を見ていない状況で、キャプテン勇治は当然延長戦を敢行した。
 
鴨居沖に移動し駆け上がりを攻める。
しかしイカは外道含めて乗らない。
 
俺はほぼ諦めていた。
 
しかし、
“ズドン!”
“キターーーーーーーーーーーーーー!”
まず俺の竿が満月を描き、次いで俺の左隣のアオリ初体験の客の竿が弧を描き、更に大便老人の竿まで曲がった!3人同時ヒット、しかもこの引きは間違いなく全員アオリである!
 
時刻は3時25分。延長戦も終盤。俺は目測6~700gの本命を無事にキャッチした。
 
当初の目論見ではガラガラの船で大量のアオリを釣り捲る予定だったが、結果的には大勢乗った船でドラマティックな釣りを演じてしまった。
しかし、この“一発逆転感”というのもアオリ釣りの魅力なのである。
 
【釣果】
7時15分出船、15時50分沖揚り
アオリイカ1杯
(外道:マルイカ1杯)

【タックル】
ロッド:マニアス・アオリスペシャル350
リール:カルカッタコンクエスト301F
ライン:PE2号、ハリス:フロロ5号
 
【ヒット・ルアー】
YAMASHITAエギ王キュウセン4号、YO-ZURIアオリーQマーブルバレンシア4号
 
【本日の総括】
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帰宅して改めて獲物を並べてみると、やはり際立つマルイカのでかさ!
しかし本当に驚いたのはこいつを捌いてみたら・・・
 
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なんと白子と卵が両方出てきた!!!
これって何?雌雄同体??
しかもマルイカのノッコミって夏だよね?
まだアオリだって全くノッコミに入っていないのに・・・。
これも放射能の影響かしら?
とビビリながらも美味しく頂きました。
 
本命のアオリは二日寝かしてから刺身に。
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相変わらず包丁裁きと盛り付けは悲惨だが、薄皮を完璧に剥いて二日寝かしたアオリイカは甘味・旨みともに豊かで本当に最高だ!
 
珍しいオーストリア産白ワインとの相性も抜群で、非常に贅沢な気分を味わえた。
 
今回はストックの確保に失敗したので、また近々アオリを狩りに行かねばなるまい。