EXTRA ROUND・・・10/11野毛屋

(承前)
そんな訳で中1日で再び野毛屋エビタイ船に乗り込んでしまったのである。

野毛屋エビタイ船にとって今シーズン最後の休日、好天気、前日の爆釣と混雑する要件は全て満たしていたこの日、案の定15人ものアングラーが集まった。
俺の釣座は左舷トモ三番手。
こうして正真正銘の今期最終戦が幕を開けた。

この日は第二海保の南側からスタート。
下げ潮に乗せてかけあがりを攻め、水深が落ち込むポイントまで到達すると流した筋の西側へと移動してまた流すといった展開だ。
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二日前とは打って変わって最高の天気。西にはくっきり富士山が見えた。

ファースト・ヒットは俺の右隣、一つテンヤ初挑戦の方。竿は大きな孤を描き、激しく叩かれている。
上がってきたのは2キロ程の良型真鯛だ。
次いで右舷側でも初挑戦の方が上げたようで、昨日からの好調を維持している様子。
しかし初挑戦であっさり釣っちゃう人も居れば、俺のように5連敗しちゃうのも居て、真鯛を狙う難しさというか理不尽さというか、複雑なものを感じる。

9時を過ぎた頃から下げ潮が効き始めた。
潮色もイイカンジに濁っており、釣れそうな気配がムンムンする。
すると、
“ゴンゴンゴン!”
ジグが着底して巻き始めた途端にアタリが!
「おお、キタ!」
操舵室から顔を出したキャプテン勇治が声を出す。
その声に驚いた訳ではないだろうが、鯛はゴムを離してしまったようでアタリが消えた。
直ぐに巻き上げて再び落とし込むが、鯛はもう追って来なかった。

その後も流し変える度に誰かしらにヒットする展開だが、ハリスが切れたり孫針が切れたりと中々数は伸びない。
その度に船長は大騒ぎするものだから、左舷トモ三番手、則ち操舵室の真下に釣座を構えていた俺はさながら実況中継を聞いているようで船内で進行している物語が手にとるようにわかり、全く退屈しないのであった。

“ゴンゴンゴン!”
おっと、何の前触れもなく(当たり前だ)鯛のアタリが訪れましたぞ!
“ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!”
べつにはじめ人間ギャートルズの主人公の少年の名を連呼している訳ではなく、鯛がジグにず~っとついて来ているのだが全くフッキングしない。典型的な小型真鯛のアタリだ。
一か八かアワセちゃおうかとも思ったが、フッキングする前にアタリは消えてしまった。

しかし2回もアタリがあった事でジグのチョイスも誘い方も間違いないと確信、こういうメンタリティのコントロールもタイラバでは大事な事だ。

緩やかに水深が深くなっていくかけあがりで、突然5mぐらい落ち込む急坂に差し掛かったポイントでのことだった。
“ゴンゴン!”
3m巻いたところでアタリ、そこから1m程巻いたところでロッドが直角に海面に突き刺さるように入った!
“今度こそキター-ーーーーー!”
三度目の正直でヒット、1.2kgに設定したドラグが音を立て煙を上げ(!)ラインが勢いよく放出される。間違いなく良型だ!
そのファイト中、二人隣の手バネのアングラーにもヒット、更に反対の右舷側でも次々と二人にヒット、なんと船中4人の竿が同時に曲がった!
当然キャプテン勇治は大興奮!!!

巻いては走られ、巻いては走られ、でも存分にやり取りを愉しんでようやく上がってきた鯛は目測3kg程のオスの真鯛だった。(後の計量で2.9kgと判明)
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手バネの方が釣った獲物は4.3kgだったそうで、大物が固まっていたようだ。

この“急に深くなる場所”は大当りだったようで、その後も流し変える度にヒットが相次いだ。
しかし既に満足感が漂っている俺のジグには不思議な事に真鯛は見向きもしないのだった。

潮が止まり、上げ潮が流れ初めても俺の竿は頑なに沈黙を守った。
そして陽が西に傾き、4時を過ぎてもキャプテン勇治は上がろうとしなかった。

夕まづめのチャンス・タイム到来なのだがここでジグが根掛かり道糸30mもろともロスト、沖揚がりの時刻をとっくに過ぎている中で流石にライン・システムを組み直す気力もなく、ここで強制終了となった。
仕方なく道具を片付け、ボーっとしてたら
「なんだよ、今日初めてやる場所流してるのに早々にしまっちゃってよお!」
とキャプテンに理不尽に叱られる俺(>_<)。
根掛かりで道糸が高切れしたのだと言い訳がましく説明すると、
「そうか。そりゃ海の神様がもう止めとけって言ってるのかもなあ。」
海の男は信心深いのだ。

最後の流しで船中2枚追加したところでキャプテン勇治は高らかに沖上がりを告げた。
時刻は16時30分、釣果は船中14枚。
電話で釣果を船宿に伝えるキャプテンの声は心なしか満足気であった。
こうして苦戦が続いた俺の2010年野毛屋エビタイ船も最後の最後に良い思い出を残し幕を閉じた。
終わりよければ全て良し。来期も頑張ろう。
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夕日に染まる横須賀ドッグ。

【釣果】
7時15分出船、16時30分沖揚がり
真鯛1枚(2.9kg)

【タックル】
ロッド:ZENITH零式 LIGHT G-TOP L 
リール:シマノ カルカッタ・コンクエスト301F
ライン:PE1号、ハリス:フロロ5号

【本日の総括】
2010年4月14日、自らの誕生日に7.4kgの大鯛を釣り上げる事から始まった2010年のタイラバ。
釣り歴四十余年を誇る弊社のアラカン・アングラー“チョイワルH氏”からは「大きな鯛ってえのは主みたいなもんだから、そんなの釣っちゃうと呪われて当分鯛が釣れなくなるぞ。」と脅され、つり丸でライターをされているエキスパートのcalmさんからはtwitterを通じて「今年のツキを使い果たしちゃったりして」とウイットとアイロニーの効いた祝辞を頂いた。

そしてそのお二方の予言通り、その後見事にタイラバ5連敗を喫してしまったわけだ。
予言というのは何故か不吉なものに限って的中する(気がする)。

しかし最後は運良く2連勝で締め括り、これで大鯛の呪いは解け、使い果たしたツキもまた戻ってきたのかもしれない。

これで今シーズンのタイラバは終了!のつもり。
次回は春のノッコミ・シーズンにデカイのを狙うとしよう。

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最後の大仕事、“捌き”が残ってる。余すとこ無く食い尽くそう!