ワタクシボウズニモスッカリナレマシタ。…7/18浅八丸

新しいタックルの筆下ろしには、いつだって期待と不安を伴う。

PALMSコーラルスター70MとツインパワーSW5000HG。
新兵器を携えやって来たのは平塚新港・浅八丸。狙うは勿論シイラだ!
同行は釣り歴四十余年を誇る弊社のちょいワルアングラーH氏(62)。その浅黒く、いやどす黒く日焼けした出で立ちと、何事も形から入る生き様。見るからにストレスと無縁で人生を謳歌しているように見える。ある意味羨ましい老い方の形と言えよう。

先に船宿に着いたちょいワルH氏が俺の分の釣座も確保しておいてくれた。左舷ミヨシ三番手に俺、四番手にちょいワルH氏というのが我々の布陣だ。

色々教わろうと思っていたのだが、聞けばH氏もシイラは初めてとのこと。ロッドはなんとシーバス用だ。更に“魚が釣れなかったらお土産のサバでも狙う”とジギングタックルまで持ち込むという周到と脱力。
大人ですなあ・・・。

定員上限の20人を乗せた船は定時に平塚新港を出港、40分程沖へ向かって疾走したのだが、その後は減速してフラフラ航海を続ける。どうやら目視でシイラの群れを捜しているようだ。船長のみならず、ミヨシに陣取った4人の客も総立ちで魚を捜している。遊びというには余りに殺気立った雰囲気が船を支配しているように感じる。もはやこれは狩りだ!
シイラが前の方で跳ねた!」船長はアナウンスと同時にポイントへ向け急加速、そして「ちょっと投げてみて!」
船はまだ動いているのにキャストを促す。
すると数投の後、左舷のミヨシでヒット!
目測60センチ程のシイラが上がった。
続いて右舷ミヨシでもヒット。シイラに向かって走る船からキャストする訳だから、前方に投げられるミヨシが断然有利だ。
しかし次の瞬間、
「おっ!」
声がした方を見ると、ちょいワルH氏のシーバス・ロッドが根元からフルベンド、そしてドラグがけたたましい音をあげてラインが放出されている!
・・・。
やはり釣歴四十余年の実力か、はたまた並々ならぬ強運を持ち合わせているのか、いずれにせよ何かを持っているこの男。
しかしタックルの強度不足は見るからに明らかで、竿はのされちゃって全く魚が寄ってこない!しかしここからが圧巻、ドラグを緩めて竿への負担を軽くすると、持久戦へと持ち込んだ。寄せては走られ、寄せては走られ、三歩進んで二歩下がる水前寺清子式ファイトを展開、トレブル・フックとは言えバーブレスだし、俺はハラハラしながら戦況を見守っていた。実際取り込みにタモ持って来た船長が「こりゃ上げられないや。」と一旦立ち去る程の長丁場。しかしそれでも結局上げちゃうんですよ、このお方!しかも1m程のグッド・サイズ!
ちょいワルH氏のファイト中、俺を含む周りのアングラーはキャストを自粛せざるを得ない訳で、はた迷惑な長いファイトなんだけど、ライトタックルで大物を仕留める醍醐味はある意味管釣りに通じる面白さもあり、腕も必要。流石です、ちょいワルH!

この日はシイラがなかなか見つからないらしく船は走りっぱなし、釣りをしてる時間より移動している時間の方がはるかに長い!
1匹釣って余裕のH氏、ふと見やればタックルを船縁の竿置きに挿して熟睡している。
一方俺は殺気立ってるミヨシの連中同様、立ち上がって魚の姿を追い求める。

・・・。

なるほど、シイラ船の乗船料が他の釣り物に比べて高いのは、燃料代が嵩むからなんだな。

延々と走り続ける船に揺られながらそんな事を考えていると、ボイル発生!船長がそんな好機を見逃すはずはなく、船を急加速させ素早くポイントへ!そして熟睡するちょいワルH氏を除く19人が一斉に竿を降る!するとミヨシで連続ヒット、そして俺のルアーにも猛烈な勢いで2匹のシイラチェイスしてるじゃないか!しかもトゥイッチを入れる度にアタックしてくるシイラ!俺は決して軽くはないタックルを激しく振ってルアーをトゥイッチングしながら巻いて投げてを繰り返す!

・・・。

しかしシイラは俺のルアーにフッキングすることなく群れを見失いこの流し終了、船は新たな群れを捜しにまたあてのない航海を開始した。

・・・。

そして12時25分、「時間なのでこれで揚がって行きます。ありがとうございました。」
とアナウンスがあり船は急加速。結局その後キャストすらすることなく沖揚がりとなったのだった。

眠りから目覚めたばかりのちょいワルH氏はつぶらな瞳で俺を見ると、「もう終わり?」と尋ねたのだった・・・。

【釣果】
6時出船、12時25分沖揚がり

【タックル】
ロッド:PALMS CORALSTAR 70M
リール:SHIMANO TWIN POWER SW5000HG
ライン:PE2.5号、リーダー:ナイロン40lb

【本日の総括】
シーズン開幕当初は100本以上のシイラが上がる日もあったらしいのだが、ここのところは苦戦気味。後日聞いたところによれば、昨年に比べ海水温が4℃も低いため、まだ本格的に群れが入ってきていないらしい。
まあ今後に期待、ってことで。

釣れなかったのは事実だが、チェイス丸見えのトップゲームは迫力満点で大興奮、更に目の当たりにしたシイラの強烈な引きは圧巻の一言だ。リターン・マッチは暑さが本格化する8月に決行だ!

さて、浅八丸では釣ったシイラを三枚におろしてくれるサービス付き。
で、「こんなに食べ切れないから」とちょいワルH氏から半身をおすそ分け。
正直言ってあまり食べたくなるような外見の魚ではなかったのだが、帰宅後に刺身で食べてみると・・・
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あらら、意外に美味!ブヨブヨしてて食感はあまりよくないものの、臭みもなく適度に脂ものってて悪くなかった。
そして勿論の事、この半身が俺が釣った魚ではないということを、家族には黙っていたのだった・・・。

シイラ編、つづく。