タコヤ記

21時過ぎ。最終の新幹線で東京へ帰るある人を新大阪駅で見送り終了した今回の大阪出張。
そして大阪の業者から執拗に誘われた夕食を丁重かつ頑なに断る。だってこれからが俺の時間なのだから。

まずはタクシーに飛び乗り、十三へ向かう。ここにはかれこれ2年以上訪れていない俺が大好きな焼肉の名店があるのだ。
入店し、生ビール大とレバ刺しをオーダー。ものの30秒で両方出てくるこのスピード感!これも俺を高揚させる重要なファクターだ。全く臭みのない極上のレバーを肴にややヌルいビールを流し込みながら、焼き物の作戦を練る。食べたいものは色々あるが、疲弊した俺の内臓に収まる量などたかがしれている。そこで俺は店員に今日の上肉のオススメ2種類を適当に盛ってくれとオーダー。“旨いものは最後までとっておく派”の俺だが、珍しくも一番旨い肉から攻めることにしたのだ。
運ばれてきたのは「イチボ」と「クラシタ」という希少部位。いずれも見事なサシの入った見るからに旨そうな肉を惜し気も無く厚切りにしてある。しかもその大判の肉が5枚ずつ入った大盤振る舞い。俺は一枚ずつ丁寧に焼く。焦がさぬよう焼き過ぎぬよう全神経を肉に傾ける。
「…。う、うまい…。」
とにかく旨い!堪らずビールもおかわり。
これだけで充分お腹いっぱいになってしまいお会計。やはりメインを先にオーダーして良かった!気になるお値段はたったの5000円。安っ!肉の質と量を考えたら、これは破格に安いと言えよう!
大満足した俺は阪急電車に乗り梅田のホテルへ向かう。(ところでいつも思うけど関西の私鉄ってホントにカッコイイ。)
もちろん俺の夜はまだ終わらない。ホテルにチェックインする前に、茶屋町のタコ焼き屋に寄り8個入りをテイクアウト、そしてコンビニでビールを買い込み2次会の準備が完了だ!


さて翌朝、目覚めれば豪雨。しかし天気予報によれば雨は午前中で止むらしい。
そこで俺はダラダラとシャワーを浴び、のんびりメジャーリーグ中継などを眺めつつ雨が止むのをマッタリと待った。10時過ぎ、町行く人の半数が傘を畳んでいるのを見て出発。もたれる胃を押さえながら向かった先は……


















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千日前のタコ焼き屋だ!何故ならば、生ビールが売ってるタコ焼き屋で朝から開いている店はここしか知らないからだ!その為にわざわざ地下鉄に乗った己の情熱が自分でも愛おしく、また同時に馬鹿だとも思う。
タコ焼き9個と生ビール中を買い求め、店の奥のテーブルで食す。熱い!歓喜と熱さで涙が浮かぶ。でも俺が求めていたのは正にコレなのだ!
俺と同じようにタコ焼きと生ビールをトレイに乗せたHIP HOP風のアンチャンが俺の隣にやってきた。と、次の瞬間「アチッ!」と声が聞こえた。若者よ、俺もつい今しがた同じ過ちを犯したところなのだよ。
「うわ、これメッチャ熱いっすね~!」と若者は照れ隠しなのか俺に話しかけてきた。HIP HOPも馴れ馴れしい人間も大嫌いな俺だが、「郷に入りては郷に従え」という言葉もあるし、村田師匠は誰彼構わずフレンドリーだ。「熱いよね~。俺も口の中ヤケドしちゃったよ~。」と不自然にフレンドリーに返す俺。しかし彼のイントネーションは紛う方なく関西弁のそれだが、地元民すら火傷させるタコ焼きの公正かつハイレベルの殺傷能力、素敵だ。

そして店を出た俺は地下鉄御堂筋線に再度乗り込み、淀屋橋から京阪電車に乗り換える。この京阪電車特急のテレビカーは、鉄道が好きだった子供時代の憧れの電車の一つだった。でもテレビモニター付きの車輌が珍しくも何ともなくなった現在においては、京都方面に1台だけしかモニターが付いていないにも関わらず、ボディにデカデカと「テレビカー」と書いてあることがみすぼらしくすら見える。しかしそのみすぼらしさこそが俺の判官贔屓を刺激するのですよ。
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終着駅の出町柳(なんてカッコイイ駅名なんだろう!?)から一輛編成ワンマンカーの叡山電鉄に乗り換える。途中の凄まじく寂れた無人駅で、割とおしゃれで割とかわいらしい娘さんが慣れた手つきで切符を乗務員に見せ降りて行ったのを見て、何故か興奮する俺。その昔、仕事で乗った身延線でたまたま乗り合わせた“割と可愛い割とおしゃれな娘”に背徳的な美を感じて以来、『ローカル線に乗る割と可愛い娘』という組み合わせに滅法弱いのだ、俺は。ちなみにここでのミソは“割と”ということ。決して度が過ぎていけない。そんなのむしろ興醒めだ。

さて更に俺はケーブルカーとロープウェイを乗り継ぎ比叡山頂へ。
目指すは勿論延暦寺だ。
生憎の空模様ではあったが、霧の延暦寺というのも霊峰感が5割増といった感じで悪くなかった。
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お寺の感想はこの記事にそぐわないので以下省略。

さてさて、帰路は比叡山バスセンターから京都駅行きのバスに乗り込む。
途中から乗り込んできたカップルが俺のすぐ前の席でイチャツキ始め軽く殺意を覚えるが、比叡山で散々見た伝教太師さまのお言葉を思い出しグッと我慢。

さて、新幹線に乗り込む前に俺にはもう一仕事残っている。

それは漆黒スープが余りにも有名な京都ラーメンの「新福菜館」で締め括りのディナーを食すこと!というわけで中華ソバ竹入with生卵と瓶ビール大をオーダー。竹入とは、竹が入っているわけではなく(当たり前だ)メンマが入っているラーメンのこと。そしてこの店ではお冷はセルフ・サービスなので、面倒臭がりの俺はビールが必須なのだ。
運ばれてきたラーメンは相も変わらぬ猛漆黒スープ。圧倒的なオリジナリティだ!しかし食べてみると確かに味は濃いのだが見た目よりはアッサリ感じる。“不思議な醤油味”と言えよう。ここで合い席となったオッサンの食い方が余りにも汚く、軽く殺意を覚えたのだが、比叡山で学んだ伝教太師さまの教えを思い出しグッと我慢。
ところでこの新福菜館、最近関東にも進出してきているらしいが、こういう個性的なラーメンは出来れば“御当地限定”であって欲しいと思うのは旅人のエゴですかね?

このようにして“タコ焼きが食べたい”為だけに出張を延泊してまで関西B級グルメを食い尽くした俺の旅は終わった。

俺は旅先では原則としてその土地のものばかり食べるようにしている。別に食通を気取るわけではなく、“本場のものを本場で味わいたい”というささやかなこだわりなのだ。
だから福岡に行けばモツ鍋にラーメン、札幌ではスープカレージンギスカンに魚介類(蝦夷バフンウニは必食だ!)、名古屋では味噌煮込みうどんに手羽先天むすひつまぶし、アメリカへ行けばハンバーガーにワラジ・ステーキやプライムリブ、フランスでは俺の主食のビールは殆ど飲まずにワイン漬けだし、ドイツではヴァイツェン・ビールにソーセージ、アイルランドではギネスにアイリッシュ・シチューと行った具合だ。

そういう意味で非常に密度が濃く、満足した関西滞在であった。

それでも“では大阪に転勤したいか?”と問われれば、俺は迷わず「NO!」と答える。だって関西には管釣りが少ないんだもん!
一応これも管釣りブログなもんでね…。