第二忠丸船長就任記念釣行・・・9/18野毛屋

小型中心ではあるが、外房で真鯛の大釣りが続いている。

最近とんと真鯛ちゃんのご尊顔を拝顔していない俺と、未だ真鯛ちゃんを釣り上げたことのないDDVセンパイは、大潮のこの日に休みを揃えて、御宿岩和田港から元気に出船する予定だった。

しかし、そこは毎度お馴染みのW前厄がもたらす負のツインパワー、休みの数日前にきっちりと大型台風が発生して順調に北上、遂には我々の休みの日の外房は大荒れの予報となり出船中止が濃厚となったのだった。(果たして休船となった・・・)

・・・。

もう慣れた。
確かに慣れたけど、本当に恐ろしいなあ、前厄のツインパワーって奴は!


比較的北風には強いと言われる相模湾の船宿の中にも早々と休船を決めるところも出てきて絶体絶命の我々。
こうなったらあの男に、いや、あのお方に頼るしかない!

結局遠征予定が一転、我々が向かった先はもはや常宿と言っても過言ではない金沢八景・野毛屋釣船店だ!
そういえば、予約していた川崎トレードウインズがシケで出船中止になった時も俺は野毛屋へ向かったんだよなあ・・・。

ん?その時の釣行で俺は生まれて初めて真鯛を仕留めたのであった!
流れ的にこれってチャンスなのでは・・・。

偶然にもこの日野毛屋では新造船の第一忠丸がフグ船に就航する記念すべき日。
そしてそれまでフグ船だった第二忠丸は本日よりエビタイ船に変更となった。
つまりこの日はキャプテン勇治の第二忠丸船長就任記念日でもあるわけだ。

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竹に大漁旗をあしらったピカピカの第一忠丸。日本酒を手土産にした常連さんを始め、平日だというのに多くの客で賑わっていた新・第一忠丸の隣で、俺とDDVセンパイと年長の常連さんの3人、更にナカノリ・エストシ君(仮名)が風邪でダウンしてしまい船長含めて僅か4人しか乗っていない定員35名の第二忠丸。

「こっちも新造船なんだから、今日は釣れてくれないと困るんだよな。」と晴れて新船長に就任されたキャプテン勇治さん(60)のコメント。聞けば2日前の旧第一忠丸最後の出船では船中3回ヒットして全てバラシたという。いつも通り明るく冗談を言う船長だけど、何かしら胸に期すところがあるのかもしれない。何だかプレッシャーがかかるなあ。

・・・。

よ~し、こうなったら船中1号で真鯛を揚げて、第二忠丸の歴史に名を残してやるっ!

平潟湾を出ると早くもウネリ、徐行運転でヨロヨロとポイントを目指した第二忠丸だったが、ポイントについてみれば波高2mの天気予報はハズレ。強い風が吹いてはいたが、釣りをするのに支障はない程度の波とウネリだった。まずは一安心。

この日の我々の釣座は左舷大トモにDDV、右舷大トモに俺。そして右舷ミヨシで船長と顔なじみのテンヤ釣り師と左舷胴の間で操船しながら竿を出す船長という布陣。左右仲良くテンヤとタイラバが一人ずつという格好だ。

開始早々に俺の背後から意味不明の咆哮が聞こえた。どうも船長がいきなりバラしたようだ。

そして右舷ミヨシの客も立て続けにヒット!しかしバラシと餌が取られただけでゲットならず。
でもいつもより妙にアタリが多いように思えるのは気のせいだろうか。

それは8時50分頃のことだった。

ゴンゴンゴン!
「!!!」
着底後に巻きはじめた途端アタリが!
そして、
“ズドーン!”
「キタアアーーー!」
垂直に絞り込まれる竿、これは間違いなく鯛だ!
“バチーン!”
弾かれるように竿のしなりが戻り、リールのハンドルから重みが消えた。威勢のイイ外れっぷりに一瞬ライン・ブレイクかと思ったけど、無念のバラシだ。船長いわく、小型真鯛はガッチリ針掛かりせずに外れてしまう事が非常に多いらしい。

その直後、キャプテン自ら己の第二忠丸船長就任を祝福する真鯛を釣り上げた。
型は小さめだけどまだ9時過ぎ、幸先が良いではないか!
次いで右舷ミヨシのテンヤ釣り師も小型真鯛をキャッチしてテンヤチームは脱ボウズ。

そして遂にその時は訪れた。
「キタ!」
俺の背後で聞き慣れた声がした。振り向くと、DDVの竿が海面に突き刺さるように直角に絞り込まれている!この日やたら活発な真鯛がフッキングしたに違いない!DDVセンパイ、はじめてのおつかい、じゃなくて初めての真鯛だ!
しかし、
「アッ!」
当の本人より先に船長が声を出した。
俺と全く同じような感じでバレてしまったのだった。
「やっぱ魚が小さいんだよ!」と船長。小型真鯛をタイラバで揚げることはかくも難しい。

・・・。

「キタキタキタキタアアアア!」
突如北風を切り裂くキャプテン勇治の絶叫が海保近海にこだました。これは大型ヒットの証だ!
しかし、
「ウオオオオオ!」
歓喜の雄叫びが一転、恐ろしい咆哮に変わった!
「ハリスが切れたぞおおお!何だよ、このヤロウ!」
己か、真鯛か、はたまた不甲斐ないタイラバ客へ向けてなのか?キャプテン勇治の怒りの連射が止まらない!
操舵室に戻って仕掛けを作り直している間も
「頭にくるな~。」
「情けないな~。」
「どいつもこいつもバラシてばっかりだな!」
収まらないキャプテン勇治の怒りが遂に我々にも向けられたのだった!

11時頃から上げ潮が流れ始めた。まあまあ速い潮だが80gのジグがかっ飛ぶような速さでもない。
にも関わらず底立ちを取り難いのは若干二枚潮気味なのだろうか?

意識して丁寧に底を取り、デッドスローに5m巻いてから早巻きに切り替えて10mまで巻くことを基本形に色々なリトリーブを試してみる。

すると6m巻いてからアタリがきた。
次は3m巻いてからアタリがきた。

いずれもフッキングはしなかったが、いかにも鯛っぽい明確で金属的なアタリだ。
これは外道なのか?それとも今日の鯛はタナが散らばっているのか?いずれにせよ、午前中で3回もアタリがあるなんて経験がない。


正午頃のことだった。

底から3m巻き、少しリトリーブ速度を上げようと思ったその刹那、
“ゴンゴンゴン!”
「!」
“ゴゴゴゴゴ!”
「!!!」
“ズドーン!”
「キタアアアアアアアア!」

今度はガッチリとフッキングしたようだ!ゆっくりと丁寧に巻き上げる。頭を振って潜り込むような独特の引き味、これは真鯛に違いない!
操船で(釣りで?)手が離せないキャプテン勇治の代わりにタモを持って来たのはDDVセンパイ。
10m程巻き上げたら獲物がおとなしくなったので余裕を持ってやり取り出来たのだが、若干不安になる。小型か?それとも外道か?
PEを全て巻き取りあとはリーダー5m!お、姿が見えた!やった、魚影が赤い!
DDVが掬ってくれたのはオスの真鯛だ!

すると左舷の船長が「大きさどれくらい?見せてよ!」と大声。俺も「1.5~1.8kgだと思います!」と大声で返す。そしてイケスに入れる前に船長に見せに行くと、「おう、これは2kgあるぞ!」との返答。(その後の船長の検量によると2.4kgだった。)
とにもかくにも久々の本命!非常に嬉しいのは勿論、頭の中は早くも今宵の夕食のメニューを何にするかで一杯だ!

同じ流しで1kg超えの真鯛をゲット、さらにその後の流しでまたしても3.4kgの綺麗なメスの真鯛をゲットしたキャプテン勇治は大騒ぎ、どうやらご機嫌もすっかり直ったらしい。

「・・・。」

さて残されたのはDDVセンパイだ。
ここまで彼にも実に3回もアタリがあり、「アタったし、掛かったし、あとは釣るだけ。」と確信に満ちた事をおっしゃる。

そんなに上手いこといくかよ、何たってW前厄だぜ。
しかし恐ろしい事に物事は実にその通りに進行したのだった!

「キタアア!」
「おお、デカイぞデカイぞ!」
DDVと船長の興奮した声に振り向いてみれば、
「!」
DDVの竿がバットからひん曲がり、しかも竿が叩かれ捲くってるじゃないか!
「おおい、今度は取り込んでやってくれ!」とキャプテンに言われ、俺はタモを持ってDDVに駆け寄る。
竿はノサれ気味で今にも海中に引きずり込まれそうに見える。
「もっと竿を立てろ!テンション緩むとバレるぞ!」船長も興奮気味だ!
なかなか上がって来ない獲物にハラハラしていたが、苦労しながらもジリジリ確実に巻いているDDV。
お!リーダーの結束部分が見えた!あと3m!ん?魚影がデケエ・・・!しかも赤い!大鯛だ!

海面に姿を現しても抵抗を止めない鯛、タモみて逃げやがった!これで逃がしたら責任重大、慎重に狙いを定めて・・・入った!重い!
揚がったのは額の張り出した4kg級の大きなオスの真鯛だ!その上顎には2本の針が完璧に掛かっていた。

「これで全員釣ったどおー!」
とキャプテン勇治も大はしゃぎ!乗船者全員釣れた上に大型も混じる最高の展開で、正に第二忠丸船長就任記念日に相応しい素晴らしい一日となった。

と、普通ならこれでめでたしめでたしなのだが、この日はこれで終わらなかった。

沖揚がり時刻の3時を迎えても観音崎~海保のポイントを攻め続ける第二忠丸。

着底からデッド・スローに5m巻いたところでアタリがないので早巻きを始めたその刹那、
“コンコンコン!”
「!」
そのままミドル・スピードで巻いていると
“ゴンゴンゴンゴン・・・ズドン!”
「キタアアアアアア!」
ドラグが不吉な音をあげて糸が鳴る!デカイ!確実にさっきの魚よりデカイ!
ビクン、ビクン、ビクン!と頭を振りながら潜り込む魚の引きが伝わる。
タモを持って駆け寄って来たのはまたしても船長ではなくDDVセンパイだ。
「おお、さっきのよりデカイぞ!」とDDVセンパイ。しかし気になるのは一瞬弱ったかに思えた魚が水深10m程のポイントから横に走り始めたこと。鮫肌のアイツだったらゴメン!
しかし海面に回転しながら揚がってきた大きな魚影は赤かった!
DDVがタモ入れてキャッチ!最後の最後に2枚目をキャッチだ!

捕まえた鼠を飼い主に見せに来る猫のように、俺も真鯛を船長に見せに行く。

「2kgはあるでしょ!」と得意気に言うと、「2kgは余裕だ、3kgあるかもなあ!」と船長。
(後の検量によると、2.8kg!)

そして
「イケスに入れる前に印しつけといて!まだ釣れるかもしんないから!」

「!」

沖揚がり時刻を過ぎているというのに、やる気満々の船長だった。

しかしその後アタリはなく、3時半に沖揚がりとなった。
スパンカーを畳みながら「いや~、今日は良かったなあ。」と満面の笑みで語りかけるキャプテン勇治の言葉と姿と優しさが胸に染みた。

【釣果】
7時25分出船、15時30分沖揚がり
真鯛2枚(2.4kg、2.8kg)

【タックル】
ロッド:ZENITH零式 LIGHT G-TOP L 
リール:シマノ カルカッタ・コンクエスト301F
ライン:PE1号、ハリス:フロロ5号

【本日の総括】
もう我々の間に言葉は要らない。“満足”などという言葉では生ぬるい、この幸福感を表現する単語などこの世に存在しないからだ。

港に戻ると「記念撮影しよう!」とキャプテン勇治のインスタント・カメラに納まった我々。
ほぼ同時に帰港したフグ船の常連に「見て見て!」と獲物を見せつける船長の姿に和みながら我々は船を降りた。
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